高電力PoE「802.3bt」について知っておきたいこと:供給電力が増加した新規格(1/3 ページ)

2018年9月に承認された「IEEE 802.bt」

 Power over Ethernet(PoE:パワーオーバーイーサネット)は、IEEE 802.3afおよびIEEE 802.3at規格によって定義されているネットワーク機能です。PoEを使用すると、イーサネットケーブルにより既存のデータ接続を介してネットワーク機器に電源とデータを同時に供給できるようになります。

 さらに2018年9月27日には、IEEE 802.3bt(以下、802.3bt)規格がIEEE-SA標準化委員会で承認され、イーサネットリンクを介して伝送できる電力が大幅に増加しました。本稿では、この規格が重要である理由と、この規格がもたらす可能性をついて説明します。

 ワイヤレスネットワークアーキテクチャがすぐに利用できるのに、いまだに有線接続を使用しているのはなぜでしょうか? 確かにワイヤレス接続は便利ですが、ビルや家庭には数百万マイルにも及ぶ既存の有線CAT5eケーブルが存在します。

 有線は無線よりもハッキングや傍受が難しく(大学などの企業ネットワークは大半が有線)、長いケーブルでもかなり低コストなため、有線接続は今でも盛んに利用されています。

高電力PoE「802.3bt」について知っておきたいこと:供給電力が増加した新規格(1/3 ページ)

 ただし、建物が、れんがや石、金属で造られていると、多くの場合は良好なワイヤレス信号を得られるかどうかは“運任せ”となります(5G[第5世代移動通信]の登場により屋内での到達範囲は向上しますが、当面の間は全面的な配備はできません)。イーサネットケーブル信号にアクセスしたい場合、ケーブルを切断する必要があります。さらに、ワイヤレスは他の信号や無線電波によって簡単に干渉されてしまう可能性がありますが、有線ケーブルはシールドされている場合が多く、「プラグアンドプレイ」が可能なため、サービス品質(QoS)が向上します。

 802.3btのシステムアーキテクチャでは、イーサネットケーブルを介して受電側機器(PD)に電力を供給する電力コントローラー、給電側機器(PSE)を使用します。

 802.3btには次のような記載があります。

 「PDは、PD検出アルゴリズムに加わることにより、電力の取得または要求を行う機器の一部である。PDになり得る機器は、電力を代替電源から取得する機能を備えていてもよい。パワーインタフェース(PI)からの電力を必要とするPDは、同時に代替電源から電力を取得してもよい」

 標準的なPDは、IP電話、ワイヤレスアクセスポイント、監視カメラなどで、イーサネットケーブルから電力を受け取ります。パワーインタフェース(PI)は、PSEまたはPDと伝送媒体との間の機械的および電気的なインタフェースです。これは、802.3btでは「PD PIの現行定義」のセクション1.4.324に定義されています。

 以前のPoE規格は、イーサネットケーブルの8本の銅線中4本のみを使用してDC電流を供給していましたが、IEEEの作業部会は、802.3btでは8本全ての銅線を使用することを選択しました。802.3bt-2018の修正案2には、次のように記載されています。

 「本修正案は、構造化配線設備内の4組のペア全てを使用する電力供給を追加し、これにより、末端機器により大きな電力を供給できるようにする。また、この修正案により、末端機器のスタンバイ電力消費を低減し、利用可能な電力バジェットをより適切に管理する機構を追加する」

 IEEEの標準化委員会には、「給電側機器(PSE)から受電側機器(PD)に供給される電力量を増加させる」という目標がありました。PDに供給されるこれらの公称電力レベルは最大71.3Wであり(PSEから90Wを給電)、同時に待機時のPDに必要とされるスタンバイ電力を大幅に低減します。

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