地下鉄の全車両に監視カメラ導入訴え、ロンドンの痴漢被害者
アリス・エヴァンズ、BBCニュース
ロンドン地下鉄で性的加害行為を受けた23歳の女性が、全車両に防犯監視カメラを設置するよう呼びかけている。
サラさん(仮名)は3月19日、セントラル線の車内で男性に腰の辺りをつかまれた。
地下鉄内の性的加害行為の4件に1件がセントラル線で発生している。他の路線と違い、セントラル線の車内には防犯カメラが設置されていない。
地下鉄を運営するロンドン交通局(TfL)は、防犯カメラがないことは「問題」だと認めている。
サラさんはオックスフォード・サーカスへ向かう通勤電車で被害にあった。初めはかばんがこすり付けられているのだと思ったという。
「そうしたら腰をつかまれた。後ろに立っていた男性が、勃起した性器を私にこすり付けていた」
「身体が完全にすくんでしまった。動けなかった」
「よくあること」
加害者の男性は、次の駅で乗客が増えたときにサラさんから離れざるを得なくなった。
ロンドン東郊ロンフォード在住で広報の仕事をしているサラさんは、リヴァプール・ストリート駅で降りて警察官を探した。
しかしイギリス交通警察(BTP)の職員はサラさんに、男性が捕まる可能性は低いと話したという。
「『よくあることだ。車内に監視カメラがないから、やってみても大丈夫だと思っている』と言われた」とサラさんは言う。
「よくあることだと分かっているなら、どうして車内に監視カメラを置かないのか」
Click to see content: Tube_line_sex_offences(表は2016~2018年にロンドン地下鉄各線で報告された性的加害行為の件数)
サラさんはロンドンのサディク・カーン市長に手紙を書いたが、まだ回答はないという。
TfLの広報担当者は、「車内の監視カメラ設置は有意義だと思うが、性的暴行事件の多くは、特に混雑する時間帯に特に混雑した車内で起きていることが分かっている」と説明した。
「混雑中に人物や行動を特定することは難しい。つまり、監視カメラは駅構内に設置する方が有意義だ」
ロンドン地下鉄全11路線のうち、監視カメラが設置されていないのはセントラル線に加え、ピカデリー線とベーカールー線の計3路線。
TfLは、2023年までにセントラル線に、ピカデリー線では「2020年代」にカメラを設置する予定だとしている。一方、ベーカールー線では設置計画はないという。
残りの8線は比較的新しく敷設され、車両にも最新技術が使われているため、監視カメラが付いている。
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ロンドン議会のシャーン・ベリー議員は、地下鉄車内の監視カメラ設置は「最優先事項」であるべきだと述べた。
「加害者が監視カメラのない路線を標的にしているなら、非常に懸念されることだ」
BTPの報道官は、サラさんの加害者についての捜査は進んでいると説明した。サラさんによると加害者は身長188センチ、濃い色の短髪で、あばた顔だったという。
事件はストラットフォード駅とマイル・エンド駅の間で発生し、加害者は灰色のスーツを着ていた。
BTPが被害者に名乗り出るよう訴えるキャンペーンを行った後、地下鉄での性的加害被害の報告は増加している。
サラさんは今なお事件に「ショックを受け、動揺している」と話し、公共交通機関に乗るのは不安だと思うようになったと述べた。
「誰かが、私にそんなことをする権利があると感じていたことが信じられない」と、サラさんは語った。