スプートニク・ショックご~ん。ロシアがコロナワクチンをもう人に打ってるようです
宇宙もワクチンも一番乗り。
そんな願いを込めて付けた名前は「スプートニクV(Sputnik V)」。まるで冷戦中の宇宙戦争ですね。
プーチン大統領が11日、世界に先駆けてCovid-19ワクチンの民間人への投与にOKを出したと発表し、あと2週間で医療従事者から先に投与してやるからな~待ってろよ~と息巻いてます。
世界では166種ものワクチン開発が進行中でしのぎを削っています。さっそく「査読も万人規模のフェーズ3もすっ飛ばして完全にヤバいでしょ」と非難の嵐ですが、大統領は「必要なテストはすべてパスした」と動じる気配もありません。
「ワクチンを打つプーチンの令嬢」の動画は別人
ふたりの愛嬢の片方にも打ったけど、微熱が出た程度でピンピンしているらしい…。さすが氷水で鍛えるプーチン家は違いますね…。
ちなみにウェブにプーチンのお嬢さんの写真として勝手に広まってる赤いシャツの女の子の写真や映像は、軍病院でワクチン接種を受けるボランティアさんでありまして、まったくの別人みたいです。
年産5億本
スプートニクVの開発はモスクワのガマレヤ研究所とロシア直接投資基金(RDIF)が共同で進めています。RDIFが立ち上げた7か国語対応のスプートニクV専用サイトには同基金のKirill Dmitriev CEOが「西側メディアが報じない真実」と銘打つ論説を寄せ、「分断ではなく国際社会との協調を望んでいる」と呼びかけています。
さらに「エカテリーナ2世にワクチンを投与したのはアメリカより30年早かった」と過去のスプートニク・ショック的な出来事の数々を披歴し、「スプートニクVには年産10億本以上の注文が殺到中だが、最初は年産5億本からスタートすることで国際合意を結んだ」とも。
「疑いの眼差しに立ち向かう」という項では、「1、2フェーズの臨床結果は今月中に学術誌に発行する」とあります。これは「国際要件に則る」ものであり、それを見れば「全員Covid-19への100%の免疫を確保できた」ことが実証されると自信を見せています。大量生産は9月開始、臨床は海外3か国で行なう予定。
…で臨床は何人終わったの?
気になるのは具体的な被験者の人数ですが、それについてはどこにも書かれていません。全フェーズを終えるまで認可は控えるべきだとする意見書をミハイル・ムラシュコ保健・社会開発相に送ったロシアの臨床試験監視団体「Association of Clinical Trials Organizations (ACTO)」によると、ガマレヤ研究所はまだ100人も臨床、終わってないみたいです…よ? ACTOのSvetlana Zavidova事務局長は今回のワクチンを「パンドラの箱」と呼び、ロシア企業が臨床のルール度外視で突貫工事を進めていることは「火を見るよりも明らかだ」とBloombergに語っています。
一方、ガマレヤ研究所のスピードの「秘密」は既存のアデノウイルスのベクター研究をバイオエンジニアしたところにある、と語るのは基金のDmitriev CEOです。次のように述べていますよ。
Chemical & Engineering Newsによると、アデノウイルスベクターのワクチンは中国、英国、米国も開発を手掛けており、かれこれ30年以上前からある技法なのですが、まだ芳しい結果は得られていないのだといいます。試作品のワクチンで効果が得られなかったり、感染拡大につながることもあり、2017年のHIV臨床では最悪の結果になっています。
基金側はアデノウイルスベクターを1本ではなく2本使用するのでスプートニクVのほうが優れているはずだとしています。ガマレヤ研究所はこの手法でエボラ出血熱ワクチンを製造した実績もありますが、効果を実証する臨床データはないということなので(WHO、昨年7月時点)、どうなることやら…。
米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は来年半ばまで大量生産はムリとの予想を示しています。また、その効果についても「98%効く」確率は「あまり高くない」のだそうですよ? WHO報道官は「ロシア衛生局に現在確認を急いでいる」とのこと。
Gizmodoもガマレヤ研究所とロシア政府、RDIFにコメントをお願いしました。何かあれば追記しますね。
Sources: News Tube, Bloomberg, Chemical & Engineering News