Apple Watchがフィットネス用として期待外れな理由
(この記事はシンジケーション・ニュースサービスのFerenstein Wireに最初に投稿され、編集されたものです。記事に関する問い合わせについては、著者であり投稿者であるGregory Ferensteinまで)
ここ3年の間にフィットネス・ウェアラブル端末は目覚ましい発展を遂げている。非常に正確な心拍数計測、フォーム・トラッキング、エネルギー計算。いずれの機能も、Apple Watchには含まれない。どうやら現時点のApple Watchは、地球上で最も高額な歩数計に過ぎないようだ。
パッとしない心拍数モニターは別として、他のラン・トラッキング、自動コーチング、アクティビティ記録といった主要なフィットネス機能は、既にiPhoneに入っているではないか。それどころか、Apple Watchはアスリートにとって最も重要な生活習慣、睡眠の分析を想定しているとはとても思えない。
恥ずかしい話だが、筆者はApple Watchの発売に大変な期待を抱き、「すぐそこまで迫ったフィットネス革命」などと書いて浮かれていた。そして、実際にジムで試した後も、将来的にApple Watchが有用なフィットネスの友となるという希望を捨ててはいない。
しかし現時点では、iPhoneに任せているフィットネス目標のモニタリングをApple Watchに置き換えても、ほとんど利点がない。
心拍数計測は不得手
ウォーキングとランニングは、アメリカで最も一般的なトレーニングだ。運動する習慣のある人のうち、3分の1以上にとっての主要な運動と言える。アメリカ人の健康の要であるウォーキングとランニングに関しては、iPhoneは素晴らしいパートナーとなってくれる。最新のiOSは、iPhoneを携帯する習慣のある人ならば、自動的に歩行と走行を記録してくれる。
ポケットかアームバンドにiPhoneを入れて運動すれば、EndomondoのようなApple Watch向けフィットネス・アプリは距離・ペース・登った高さといったデータの大部分を、iPhoneを利用して集計してくれる。下の画像は筆者がサンフランシスコの美しいバーナル・ハイツをApple Watchなしで駆け上がったデータだ。
QS(Quantified Self)に熱心な人は心拍数計測用のデバイスを装着してランニングする。邪魔なガジェットの数を減らすというのがApple Watchの大きな約束だったはずだが、残念ながら心拍数モニターのパフォーマンスは芳しくなく、約束は果たせていない。
ジムで試用して気づいたのだが、愛用しているPolarのチェスト・ストラップで数値がターゲット心拍数ゾーンと一致した時、Apple Watchはまだ計算に手こずっているようだった。このポストの最上部にあるカバー写真がその様子だ。本気で走っているときに手首のデバイスを何度も見るなど、身の安全のためにも、精神の健康のためにも御免被りたい。
ヒル・スプリント(ジムでのテスト)で長時間走れば、Apple Watchでも心拍数を計測することができた。だいたい180bpmあたりの数値が表示された。しかし、試しに速度を落としてみると、楽をしすぎだとiPhoneが警告してくることはなかった。事実、下の画像のように、完全に走るのをやめてもアップルの心拍数モニターは気づかなかった。
心拍数を計測しながらのトレーニングは繊細な戦略に基づいたものだ。10bpmを超える誤差は許容できない。そのようないい加減な計測では、正しくトレーニング・メニューを消化できない。特に心拍数の高いメニューでは一秒一秒がものを言う。Apple Watchはそのようにはできていない。
フィットネスのためのデバイス
それでもApple Watchは革命的端末たりうる。ただし、その優位性は計測できるデータ量で他のフィットネス端末に勝っているという点ぐらいに留まる。フィットネス界の次なる進化はフォーム・トラッキング。すなわち、使用者の動きの良し悪しを評価できるウェアラブル端末だ。
例えば、Sensoria Smart Sockは足裏の圧力を計測し、走り方をコーチしてくれる。おかげで走った翌日にかかとの痛みで苦しむこともない。自動オーディオ・コーチ機能が耳元から指示を出してくれる。
Amiigoはリストバンドとシュークリップの連携により、ウェートトレーニングの反復数を自動的に記録する。
Athosスマートショーツは適切な筋肉が働いているかどうかを電気信号で感知する。これを装着してみると、筆者のスピンバイクのフォームは素晴らしいと評価されたが、オリンピック・スクワットは片側に偏りすぎて危険と指摘された。怪我のリスクを避けながら身体を鍛えるには、手足を左右均等に使うのが鍵だ。
最終的に、アップルはこれらのデータをまとめ、ユーザーの健康の全体像を示し、良質なウェートリフティングとその後の脂肪の減少にパターンを見出すことができるかもしれない。あるいは、悪いランニングフォームは運動する日数の減少につながることを発見し、1週間脚を休めるよう提案する、なんてことも可能だろう。
どれも現時点では、理論上の話だ。
iOSは一般的な健康に関しては有用
一般的な健康に関しては、既にiPhoneで重要な項目を計測可能だ。ポケットにiPhoneを入れておけば、最新のiOSに入っているソフトが自動的に歩き・走り・登りといった運動を記録してくれる。また、iPhoneをベッドに押しつけてあった時間から、睡眠時間の簡単な統計を作成するアプリもある。
しかしながら、新しいガジェットがあなたの(あるいはご両親の)健康意識を高める起爆剤になると考えるなら、Apple Watchを購入するのは立派な選択だろう。食生活に気をつけよう、座ってばかりいるのはやめよう、夜は歩きに行こう、といった具合に、ことあるごとに提案してもらわないと運動できない人にとって、iOSはぴったりだ。
一例を挙げると、アップルが選んだベスト新健康アプリのひとつ、Larkは、実績ある心理学的コーチ技術を用いてユーザーに運動や食生活の改善を促す。
食事記録の際には、Apple Watchに話しかければLarkがリアルタイムに助言してくれる。グラノーラ・バーに関する最新健康ガイドラインが組み込まれているのには感心した。いまやグラノーラ・バーは砂糖版トロイの木馬として知られているので、この点は評価したい。
一方で、トライアスロン選手、ウェートリフティング選手、ランナー、サイクリスト、クロスフィッターなどのトレーニング用としては、Apple Watch導入の効果は薄いだろう――少なくとも現時点では。Apple Watchはまだ第一世代だから、より有用なフィットネスの相棒へと進化する可能性は高い。
画像提供:Greg Ferenstein for the Ferenstein Wire
Gregory Ferenstein[原文]
※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。