「遅発性筋肉痛(DOMS)」の予防を目指すケア法のコツ

《目次》

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坂道のアップダウンを繰り返したり、長時間のスクワットに励んだり、久し振りのランニング / サイクリングに出た翌日など、筋肉がまるで骨に張りついた石みたいにカチカチに固まってしまう、そんな痛い思いをしたことはないでしょうか?

「遅発性筋肉痛(DOMS=Delayed Onset Muscle Soreness)」と呼ばれる症状です。

◇遅発性筋肉痛(DOMS)の原因とは何か

激しい運動をした直後に身体のあちこちが痛む、よくあることです。ランニングやサイクリングなど運動の翌日や翌々日になって痛みがおそってくることも珍しくないでしょう。

遅発性筋肉痛(DOMS)とは、運動後24~48時間以内に訪れる筋肉の痛みのこと。その原因が何なのか? まだ完全には解明されていません。運動による筋肉の損傷や筋肉が、

伸張(エキセントリック収縮=伸張性筋収縮)と短縮(コンセントリック収縮=短縮性筋収縮)とを繰り返すことによる微細な筋断裂が原因であると、一般的には考えられています。

例えば自転車でペダルを踏み込む動作は、ハムストリングスにとって想像以上にエキセントリックな動作ということになります。そしてその伸張が、ストローク毎に繰り返されることになるのです。これはサイクリストにとっては、当たり前の遅発性筋肉痛(DOMS)として認識されています。

「これは、激しい伸縮運動が繰り返されることにより生じる症状です」と、スターリング大学で栄養学/運動代謝学の講師を務め、ゲータレード・スポーツ科学研究所の一員でもあるオリバー・ウィタード博士は解説しています。

◇そもそも、筋肉痛とは何か

そもそも筋肉痛とは、「筋細胞の修復および回復がなされる際における、それに伴って起こる炎症の結果」という説明が一般的です。そして、身体が運動に順応していくにつれ、程度は軽減されることも実感していることでしょう。確かに、DOMSは苦痛であり不快なものです。が、「そのことでトレーニングを中断すべき」ほど深刻な症状ではないはずです。

「DONSそのものは、極めて自然な流れで起こることです。的確なケア方法さえ知っていれば、翌日のトレーニングに影響を及ぼさない程度には予防制御することも期待できます」と、「U.S.アスレチック・トレーニング・センター」を運営する理学療法士のゲイリー・ゲリエロ氏は言います。

ライフスタイルにも合ったスマートな方法を知ることで、それを日常的に取り入れて行くことで、DOMSの影響を大きく軽減させることができるという考えをゲリエロ氏は持っています。「何を行なう場合においても、大切なのは一貫性です。一貫性を守り通すことさえできれば、効果は必ず実感できるはずです」と重ねて、ゲリエロ氏は力説します。

◇遅発性筋肉痛の症状、その影響とは

運動の後で多少の痛みを覚えることがあるのは、これといって珍しいことではありません。むしろ、それを歓びと感じている人も少なくないはずです。ですが、DOMSを前向きに歓迎したくない人もいるはずです。

「ワシントン・ウェルネス・フィジカルセラピー&スポーツケア」の理学療法士ブレア―・キャラハン博士は、「運動後の痛みがハードワークを証明してくれているかのように感じることもあるでしょう。ですが、その感覚を自ら求めるようになってしまっては本末転倒です」と注意を促しています。

「筋肉痛を感じない
からといって、
筋肉が強化されていない
という訳ではない」

「DOMSとは、ダメージと疲労のサインに他なりません」と、上記のキャラハン博士は言います。さらに「足首を捻挫(ねんざ)すれば、歩き方に影響が出ます。同じようにDOMSになれば、身体の動作全体に影響が及ぶことになるでしょう。歩き方、そして座り方、(サイクリストにとっては)ペダルの踏み方&力の入り具合などなど、さまざまなことにバランスの変化が及ぶことが予想できます。痛みというものに“メリット”など、長期的にも短期的にもないと言えるのです。そこで重要なのは、運動に対応できる筋力へと整えていくことです。痛みを感じないからといって、筋肉が強化されていないという訳でもありません」と言います。

◇3人の専門家による筋肉痛予防のアドバイス & 回復方法

今回はウィタード氏、ゲリエロ氏、キャラハン氏など、専門家に意見を求めながら栄養状態やライフスタイルの改善によるDOMS予防、DOMSを引き起こさない運動のコツ、運動後のリカバリー方法(回復方法)などを紹介していきます。

そうすることで、筋肉痛の回避を目指した一貫性のあるトレーニングを定着させていく、そのための準備をしていきましょう。

◇遅発性筋肉痛(DOMS)を予防する、4つの食事アドバイス

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【1】炎症制御の期待できる
食事を中心に

抗酸化物質が炎症を抑えるという意見には、異論もあるようです。ですが、さまざまな研究によって、抗酸化物質が免疫システムを強化し、DOMSほか肉体の痛みを引き起こす遠因となるフリーラジカルによるドミノ倒しのようなダメージを阻止し、細胞を損傷から守る効果が示唆される報告があることも確かです。

特にブルーベリー、ザクロ、チェリー等はビタミンA、C、Eなど、抗酸化物質を多く含むのみならず、その他の栄養素も充実しているため、積極的に食べるべきだとウィタード氏は強調しています。

「遅発性筋肉痛(DOMS)」の予防を目指すケア法のコツ

【2】健康的な脂質を十分に摂る

細胞の維持に欠かせないのが脂質です。「魚類に含まれるオメガ3脂肪酸は筋肉の細胞膜に取り込まれることでバリアを形成し、細胞膜の状態を維持すると言われています」と、ウィタード氏は言います。

細胞膜の劣化した細胞は「クレアチンキナーゼ」という酵素を体内に流出させ、これが筋肉痛や筋痙攣(きんけいれん)を引き起こす一因となっていることが研究によって報告されています。オメガ3脂肪酸を豊富に含むのは、脂ののった魚類です(魚油のサプリメントではありません)。魚が苦手という人は、亜麻仁(フラックス)やホウレンソウといった食材を日頃から多く取り入れるよう心がけましょう。

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【3】ビタミンDを十分に摂る

「ビタミンDを食事に取り入れることで筋肉の回復が大きく促進されることが、最近の研究結果により明らかになっている」、とウィタード氏は言います。

また、「ビタミンDは筋肉の機能を向上させる」とする結果を導き出した研究もあり、怪我の予防などにも役立つはずです。ビタミンDを効果的に摂取するには、脂肪分の多い魚類や乳製品といった食材を取り入れるといいでしょう。

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【4】プロテイン摂取を心がける

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「一日を通じてプロテイン(タンパク質)を摂取することで、DOMSを予防することができます」、と「USAC(USA Cycling=アメリカ自転車連盟)」の認定コーチの資格を持つネイト・ダン氏は言います。彼は、「3時間ごとに、約20~30グラムのプロテインを目標にすると良いでしょう」と言います。それは、体内に絶え間なくプロテインを取り入れていくことで、筋肉の構成要素であるアミノ酸の安定供給がなされることによる効果とされています。

専門的なプロテインシェイクでなくても、ギリシャヨーグルトやナッツ類など、お好みの方法で適度なタンパク源を摂取するようにするといいでしょう。

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◇DOMS回避のためのトレーニングの仕方・4つの注意点

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【1】運動開始時(スタート)から
飛ばし過ぎない

筋肉の損傷を未然に防ぐための最も基本的なルールは、プログレッション(=トレーニングの段階を上げること)を意識し、トレーニングの強度を段階的に引き上げることです。

「許容できる以上の負荷を肉体にかけることで生じるのが、DOMSになります」と、ダン氏は言います。そして、「自分の実力に適った出発点を見極め、そこからスタートすべきです。痩(や)せているか、太っているか、アクティヴなタイプか? ケガからの回復を優先させなければならないこともあるでしょう。自分の身体の正直な声に耳を傾けてください」とのこと。

「日常的に身体を動かす習慣がない」という人であれば、週に3回程度の軽いサイクリングなどの有酸素運動から始めてみると良いでしょう。1回につき60~90分を目安にしてみるといいかもしれません。身体に大きな負担をかけずに鍛えるためには、課すべき負荷を段階的に安定的に積み上げて行くことがおすすめです。

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【2】トルク(並進運動を生む「力」)
よりも回転数

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「例えばサイクリストであれば、負荷を抑えた上で速い回転速度を維持することで、間接に加わるトルクや筋肉への負担を小さく抑えることができます」とダン氏。「スプリントのインターバルを開始する前にまず、毎分90回転を目安に身体を慣らしておくだけで、結果が大きく変わります」とのこと。つまり、ギアを上げて思いペダルを踏むのではなく、まずは下のギアで速く回すことを考えるべきということになります。

【3】己を知ること――
そこからの「プッシュ(押す系の筋トレ)」

「無茶を承知で激しいトレーニングを行なったり、短期間集中のハードなワークアウトを行なうことは、決して無意味なことというわけではありません。ですが、『無理は、いつしか自分に返ってくるもの』ということを、あらかじめよく理解しておくべきでしょう」と警鐘を鳴らすのは、マックマスター大学の運動学教授であり、アメリカスポーツ医学会およびアメリカ栄養学会の研究フェローでもあるスチュアート・フィリップス博士。

「限界を超えることで筋肉を傷めてしまわないように、過剰なトレーニングを行なった後ではその負荷で傷ついた分だけ、それにふさわしいケアを十分に施さなければなりません。それさえ肝に銘じておけば、激しく鍛えた筋肉も1~2週間のうちに回復することが期待でき、あなたのフィットネス自体もさらに向上していきます。1週間を超えるハードプッシュ系の筋トレは、“やり過ぎ”ということになります。つまり、オーバートレーニングということです」。

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【4】クロストレーニング(異なる種類の
筋トレや様式の組み合わせ)を定着させる

例えば、サイクリストであれば、サイクリングと並行して他のトレーニングも合わせて行うことで、より強いライダーになることができます。

「自転車に乗るのが大好きな相手に、“今日は自転車じゃなくて、プールで泳ごう”と提案するのは簡単ではありません」と、キャラハン氏。「とは言え、せめて週に1日か2日はウエイトを上げるなどして、まんべんなく安定した筋力を維持することに専念するのも悪くありません。より健康で、より充実したアスリートになることを目指すのであれば、クロストレーニングは欠かせないでしょう。またその結果として、自転車でのパフォーマンスが向上するのも間違いないことです」と、続けて言います。

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つまり週に1日か2日は、ウエイトトレーニング、ヨガ、ジョギング、速度を意識したウォーキングなどを行ない、普段とは異なる筋肉の動かし方を意識して、サイクリング用の筋肉への負担を減らし休ませることをおすすめします。

◇運動後、「筋肉痛(DOMS)」を予防するために行うべき2つのこと

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1.とにかく燃料補給

人体は運動によって生じた筋肉の損傷を修復するため、プロテイン(タンパク質)から得られるアミノ酸を消費していることは皆さんご存知のことでしょう。

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異論を唱える研究者もいますが、アスリートの多くは「運動直後の30~60分の間に、プロテインを多く含むスナック類を食べておくことで筋肉の修復を促し、DOMS予防を行なう」という意識が一般的となっています。その際における摂取量は、「約20グラムを目安とすると良い」としているのは、「パンナム・ゲームズアメリカン競技大会(=北南アメリカ大陸諸国が参加する、4年に1度催される総合競技大会)」で主任栄養士を務めるナンシー・ゲスト氏です。

「ホエイプロテイン(牛乳由来のタンパク質)」の入ったスナック類が、中でも効果的だとゲスト博士は言います。「ホエイプロテイン」にはロイシンというアミノ酸が豊富に含まれており、これが筋タンパク質の合成を促進してくれるそうです。

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2.フォームローラーで筋肉のケアを

運動を行なった直後の筋肉繊維は、滑らかさを失った状態です。そこで、フォームローラーを用いたセルフマッサージを行なっておけば、筋肉繊維の癒着や瘢痕組織(はんこんそしき)がよく解(ほぐ)れ、より順調な回復が期待できます。

「私自身、このフォームローラーの大ファンです」と、キャラハン氏は言います。「軟部組織へのマッサージと理屈はとても似ており、傷ついた筋肉への血流と栄養の運搬を活性化することで、回復速度の向上が期待できるのです」とも、説明を加えてくれました。

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「エスクァイア日本版」ではおすすめのフォームローラーを紹介していて、5000円以下と値段がお手頃のモノまで、さまざまなサイズの製品が売られています。時と場所を選ばず簡単に使用することができ、痛みの軽減や予防に役立ちますので、手に入れるだけの価値はあるでしょう。

例え外出先であっても、もしくはNetflixの気になる番組を眺めながらでも、街のマッサージにかかるよりもはるかに少ない費用で、気軽にマッサージができるというわけです。「これを使わない手はありませんね」とキャラハン氏。

◇それでも、もし遅発性筋肉痛(DOMS)になってしまったら?

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(極力)鎮痛剤に頼らない

「DOMSが回復するまでの期間におけるトレーニングを乗り切るためにと、抗炎症剤や鎮痛剤などを使用するのはあまり“おすすめできません”」と、ウィタード氏は釘を刺しています。

抗炎症剤には、メリットよりデメリットのほうが多いといい見解が有力です。症状を治すのではなく、「単に覆い隠すだけ」という場合も多いと言います。「結局、より大きなダメージが蓄積されることとなり、場合によっては深刻な状況が引き起こされる可能性もある」というのが、ウィタード氏の見解です。皆さんも自身で、痛みを誤魔化すことと、痛みを緩和させること、その違いをよく認識しておくべきでしょう。

専門家の治療に頼る

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以上にように、ポイントを解説してきましたが、それでも、トレーニングのたびにDOMSに悩まされ続けているという人は、治験の豊富な理学療法士を頼ることをおすすめします。

「凍結療法、鍼治療、電気マッサージ、フローテーションタンクを用いた治療など、試す価値のある方法は探せばいくつもあります」と、ゲリエロ氏は言います。

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◇まとめ

とは言え、「そのような専門的治療を行い、さらにそれへの信頼性の高い理学療法士を見つけるのは、そう簡単なことではないかもしれません」と、ゲリエロ氏は認めています。だからこそ、治療の予約を取る前に、まずはどのような選択肢があるのか? をよく調べた上で、DOMSへの対処法について、あらかじめ質問をすることを恐れないことも重要となります。

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Source / Bicycling
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。

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