腕に痛み・発熱…知っておきたいワクチン副作用
新型コロナウイルスのワクチン接種は3回目接種も始まり、次の段階に進んだ。医療従事者や高齢者ら3100万人程度を前倒しする方針も示され、再び関心が高まっている。一方でワクチンの副作用を不安視する声もある。現状と注意点をまとめた。
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ワクチン接種後に発熱や倦怠感、病気休暇も多く
厚生労働省によると、11月14日までに米ファイザー製を接種した約1億6305万回のうち、軽微なものも含めた副作用の報告は医療機関から2万5522件あった。接種後の死亡は1243人報告された。米モデルナ製は約3176万回のうち、軽微なものも含めた副作用の報告は3919件で、接種後の死亡は67人だった。
英アストラゼネカ製は約10万回のうち、軽微なものも含めた副作用の報告は12件で、接種後の死亡報告はなかった。
死因は心疾患や脳卒中などで、大半について専門家は「ワクチンと症状との因果関係を評価できない」と判定した。「接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」とも判断した。
厚労省部会に示された順天堂大コロナワクチン研究事務局の調査結果によると、ファイザー製の2回目接種を受けた人の38%が発熱し、68%が倦怠(けんたい)感を訴えた。モデルナ製では2回目接種を受けた人の77%が発熱し、80%に倦怠感が出た。
厚労省はホームページで、発熱は接種後1~2日以内に起こることが多いとし「必要な場合は解熱鎮痛剤を服用するなどして様子をみてほしい」と指摘している。
両社のワクチンについて、接種後に心筋炎や心膜炎が発生するとの報告があり、厚労省は添付文書の改訂を指示し、注意を促した。同省は「心筋炎や心膜炎のリスクがあるとしても、ワクチン接種のメリットの方が大きい」と説明している。
接種当日~翌日は安静に、入浴は可能
副作用のうち、急激なアレルギー症状であるアナフィラキシーでは、じんましんやかゆみ、息切れ、血圧の低下や意識消失などに突然襲われる。早めにエピネフリン(アドレナリン)や酸素を投与すれば深刻な事態になりにくい。副作用(後遺症)が起きた場合、他のワクチンと同様、医学的に因果関係があると国の審査会で認められれば、補償が受けられる。
厚労省によると、ワクチンを受けた当日は激しい運動や過度の飲酒は控える。接種部位については、清潔に保つよう心がけるようにする。接種した後の体調が良好であれば、運転をしても問題はない。ただし、体調に不安がある場合は運転を控える。接種当日から翌日にかけては、安静に過ごすことが大切としている。
職場接種では、本人や家族に副作用が出た場合、特別休暇を与えたり、看護のために休めたりするような支援策を取り入れる企業もある。
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アストラゼネカ製も接種開始、原則40代以上に
接種の仕方も違う。インフルエンザは皮下組織に入れる。新型コロナはより深い筋肉まで注射する。皮下注射は成分がゆっくり吸収され、効果が長持ちする。筋肉注射は皮下注射に比べて副作用が少なく、抗体ができやすいとされる。海外では筋肉注射でワクチンを投与するのが一般的だ。ファイザーやモデルナのワクチンも筋肉注射で効果を確認している。日本の承認審査では海外のデータも参考にするため、筋肉注射しなければならない。皮下注射では効果や副作用が筋肉注射と異なる可能性がある。
アストラゼネカ製のワクチンはウイルスベクターというタイプで、ファイザー、モデルナのワクチンとは異なる。ごくまれに血栓ができる副作用が報告されている。当初は国内での公的接種では使われなかったが、接種が遅れた40~50代の重症者が増えていることを受け、原則40代以上を対象に国内でも使われることになった。3回目接種用としては使わない。
また、一部のモデルナ製ワクチンで異物の混入が報告され、厚労省は8月26日、約160万回の使用見合わせを決めた。
SNS(交流サイト)上などで、ワクチン接種が「不妊、流産につながる」などの投稿もあるが、厚生労働省は「科学的な根拠はない」と否定している。
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