ニュース 現地時刻が分かるだけじゃない「GMTウォッチ」の魅力と2021年に注目されたモデル
現地時刻が分かるだけじゃない「GMTウォッチ」の魅力とは?
例年に比べて印象に残るものが多かったからだろうか、2021年に発表された腕時計のなかで目についたのが、GMT機能を搭載したモデル。簡単に言ってしまえば、ホームタイム(母国時間)とローカルタイム(現地時間)の時刻が確認できる機能を備えた腕時計なのだが、一方でGMTウォッチには、そうした実用性だけにとどまらない魅力がある。【すべての写真を見る】
航空会社の依頼によって生まれたGMTウォッチ
GMTウォッチとは、ダイアル中央に備えられた24時間表示のGMT針と回転式ベゼルの組み合わせによって、2カ所以上の時刻を表示する時計。当然のことながら、その誕生にはかつての世界標準時=グリニッジ標準時が大きく関わってくる。1884年に行われた国際子午線会議においてイギリスのグリニッジ天文台を通る子午線が本初子午線として定められると、以後、世界は24のタイムゾーンに分割されることに。つまり、グリニッジを基準にして経度15度ごとに東側でプラス1時間、西側でマイナス1時間の時差が設定されたのだ。この規則性を時計に取り入れたのが、スイス・ジュネーブの時計師ルイ・コティエで、1930年代には世界の主要28都市の時刻を知ることのできるルイ・コティエ式ワールドタイムが登場。パテック フィリップをはじめとする多くのブランドが採用した。とはいえ、ベゼルに多くの都市名を刻んだこの方式は表示が煩雑で、ユーザーが知りたい時間帯を瞬時に読み取ることができない。そこで、旅客機による大陸間横断が盛んになった1950年代に入り、パン・アメリカン航空がロレックスに依頼したのが、ふたつの時刻だけを表示できる時計の開発。これを受けて1954年に誕生(発売は1955年)したのが、GMTウォッチのパイオニア「GMTマスター」で、1982年には時針の単独調整機能を備えて第3時間帯の表示も可能にした「GMTマスターII」が登場する。
魅力はGMTウォッチ特有のデザイン
これ以降、GMT機能を搭載した時計は各社から発売されるように。当初こそ航空会社からの要請で開発された、パイロットのための時計であったが、海外との往来を頻繁に行うビジネスパーソンやツーリストが増えるに従い、GMTウォッチは人気を獲得。面倒な操作なしに2カ所の時刻を読み取れる実用性が支持されたわけだが、その一方ではGMTウォッチ特有のデザインも注目されるようになった。多くのモデルでは、ホームタイムの視認性を高めるためにGMT針がビビッドなカラーで彩られており、これがデザインの程よいアクセントに。また、ベゼルに24時間のタイムゾーンを記したモデルでは、昼夜を分かりやすくするためにツートーンカラーを取り入れており、実用面を考慮したデザインがルックスの向上にも影響を与えている。ロレックスが初代「GMTマスター」で作り上げたこのデザインは、さまざまなブランドがGMTウォッチをリリースするようになって以降、各社の個性が表れるエレメントになった。自由に渡航することが適わない今だからこそ、来るべきその日に備えて最良のパートナーとなるモデルを選びつつ、そのデザインワークをじっくりと愉しんでみるのもいい。
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