経済・IT 「Apple Watch」新OSでさらに使い勝手が超進化

ディスプレーが大型化してデザインを変え、耐久性も増した「Apple Watch Series 7」が、10月15日に発売される。iOS 14.5で、Apple Watch着用時だとマスクでもFace IDを解除できる機能が搭載されたこともあり、新モデルに注目している人は多いはずだ。新モデルの登場に先立つ形で、既存のApple WatchにもwatchOS 8の配信が9月20日に始まった。ワークアウトや精神統一をするための「マインドフルネス」が追加されたほか、時計の顔である文字盤のバリエーションも増えている。

また、先行的にアナウンスされていたアクセシビリティのジェスチャー操作が加わったのも、watchOS 8からだ。この機能を使うと、Apple Watchにもう一方の手を触れることなく、片手のジェスチャーだけで操作することが可能になる。本来は、体の不自由な人に向けた機能だが、Apple Watchを片手で操作したくなるシーンは意外と多い。この機能は、設定次第でさまざまなユーザーの役に立つ。

同様に、Apple Watchのアクセシビリティ内には、さまざまな便利機能が搭載されている。この設定を見直すことで、Apple Watchを一歩踏み込んで活用できる。普通に使っているだけだとなかなか開くことのない設定メニューこそ、OSアップデート時に改めて見直す価値がある。今回は、アクセシビリティに隠されたApple Watchの利便性を上げる機能を紹介していこう。

片手だけで操作することが可能に

iPhoneをカバンやポケットの中から取り出す必要なく通知を確認できたり、Apple Payで決済できたりと、非常に便利なApple Watchだが、腕時計の形をしているため、操作時にはどうしても両手が必要になってしまう。片腕に巻きつける必要があり、画面をタッチするには反対の手を使わなければならないからだ。そのため、トートバックやブリーフケースなどの手持ちのバッグを持っていたりすると、操作がしづらい。特にApple Payを使う場合、サイドキーをダブルクリックしなければならなず、荷物が重たいとなかなか呼び出せないこともある。

そんなときに活用したいのが、watchOS 8で搭載されたジェスチャー操作だ。この機能は、Apple Watchを装着しているほうの手で、特定の動作をすることで、ディスプレーに触れずに操作することができるようになるというもの。手が不自由なユーザー向けて開発された機能だが、片手がふさがっているときにも重宝する。ただし、ジェスチャーだけで操作を完結させるのはなかなか骨が折れる。そのため、Apple PayやSiriなど、特定の機能を呼び出すためにジェスチャーを使うといいだろう。

4種類のジェスチャーを覚えよう

設定は、iPhoneで行う。まず「Watch」アプリを開き、「アクセシビリティ」を選択。「AssistiveTouch」を選んだら、次の画面で「AssistiveTouch」をオンにする。同じ画面で、「ハンドジェスチャ」を選択して、次の画面で「ハンドゼスチャ」をオンにすれば、ジェスチャーでの操作が可能になる。ジェスチャーは4種類。「ピンチ」「ダブルピンチ」「クレンチ」「ダブルクレンチ」がそれだ。ピンチは、親指と人差し指をトンとぶつけるような操作。クレンチは、指をグッと握るような動きだ。「ダブル」は、それを2回繰り返すことを意味する。

「アクセシビリティ」の「AssistiveTouch」で「ハンドゼスチャ」を有効にしてから、各ジェスチャーに操作を割り当てる(筆者撮影)

標準だとアクションメニューを開いてから、カーソルを移動させるように設定されているが、すべての操作をジェスチャーで行う必要はないため、ジェスチャーで呼び出したい機能を設定しておくといい。ここでは、「ピンチ」に「Crownを押す」、「ダブルピンチ」に「Apple Pay」、「クランチ」に「Siri」を割り当ててみた。また、同じ画面の「有効化するゼスチャ」で、AssistiveTouchをオンにするための動作も決めることができる。ここでは、「ダブルピンチ」でAssistiveTouchが起動するようにした。

経済・IT 「Apple Watch」新OSでさらに使い勝手が超進化

これで設定は完了。Apple Watchを装着したほうの手で、実際に設定したジェスチャーをしてみよう。上記の設定をした場合、画面点灯時にダブルピンチをするとAssistiveTouchが有効になり、もう1回ダブルピンチをすると、Apple Payが立ち上がる。ただし、このままだと決済が可能な状態にならない。そのまま支払いをしたいときには、ジェスチャーを設定する1つ前の「AssistiveTouch」の画面で、「AssistiveTouchで承認」をオンにする必要がある。これを設定しておくと、ジェスチャーだけでApple Payが利用できるようになる

AssistiveTouchは常時有効にすることもでき、Apple Payを素早く呼び出したい場合はそちらのほうがスムーズだ。ただし、AssistiveTouch有効時には、タップ可能な場所にカーソルが表示されてしまう。そのため、文字盤によってはあまり見栄えがよくない。タップできるコンプリケーションがない文字盤では、カーソルが出現しないため、AssistiveTouchを常時有効にする場合は、こうしたものを使っている場合に限定したほうがいいだろう。

難点は、常時ジェスチャー操作が求められてしまうこと。両手がふさがっていないときにも、Apple Pay利用時にAssistiveTouchで承認をしなければならない。どちらが便利かは一概には言えないが、Apple Pay利用時に、もう一方の手がふさがっていることが多い場合は、AssistiveTouchを使ったほうが手っ取り早い。自分の使い方に合わせて、設定を見直してみるといいだろう。

ヘッドホンから流れる大音量を「警告」

Apple Watchは、アクティビティやワークアウトなどを通じてユーザーの健康を管理するデバイスという色合いが濃いアイテムだが、体を動かすことだけが健康管理のすべてではない。実際、Apple Watchには睡眠検知や手洗い検知など、腕に装着しているからこそできる、さまざまな機能が搭載されている。聴力を守るためのヘッドホン通知も、そんな機能の1つだ。

ヘッドホン通知と言っても、音量がどの程度かを調べるための機能ではない。音が大きすぎて耳に影響が出そうな場合だけ、Apple Watchに通知が表示される。大音量で音楽を聞くと、迫力が増すのはいいが、長時間だと耳に与えるダメージも小さくない。健康のためにも、この機能を有効にして、耳に優しい音量までボリュームを落とすといいだろう。

通知が表示される基準は、過去7日間で80デシベル超の音を40時間聞き続けた場合。iPhoneにも同様の機能はあるが、Apple Watchは単体でもAirPodsなどと接続して、音楽を再生することができる。ランニングなどをする際に、Apple Watchだけで音楽を聞くようなことがあれば、Apple Watch側でヘッドホン通知をオンにしておきたい。

Apple Watchで音楽を聞く場合、ヘッドホン通知は有効にしておきたい(筆者撮影)

設定方法は次の通り。iPhoneで「Watch」アプリを開き、「アクセシビリティ」を選択する。アクセシビリティは縦に長いので、スクロールさせていくと下のほうに「ヘッドフォン通知」という項目が見つかるはずだ。これをオンにすると、耳に悪影響を与えるような大音量で長時間音楽を聞いているときに、Apple Watchに通知が表示されるようになる。

ちなみに、音楽を再生している最中に、どの程度の音量になっているかはApple Watchで調べることができる。音楽再生中にApple Watchのコントロールパネルを開き、耳のマークをしたボタンをタップしてみよう。ここでは、dB単位で音量が表示される。音が大きすぎると思ったときには、直接音量を下げることも可能。耳の健康を守るためにも、ぜひチェックしておこう。

Apple Watchは腕に巻く端末のため、Series 7でディスプレーが大きくなったといっても、サイズには限界がある。目が悪いと、何が書いてあるのかがわかりづらいかもしれない。設定の「画面表示と明るさ」で、文字のサイズを大きくすることはできるが、アプリによっては情報量が減ってしまうのがネックだ。このようなときには、一部だけを拡大する「ズーム機能」を利用するといい。

一部を拡大したいときに便利な「ズーム機能」

この設定も、「アクセシビリティ」から有効にできる。「Watch」アプリで「アクセシビリティ」を開き、「ズーム機能」をタップして「ズーム機能」のスイッチをオンにしよう。最大ズームのレベルは、スイッチの下のスライダーを左右に動かして調整することができる。ズーム機能を有効にしたら、Apple Watch側で必要なときに呼び出すようにすればいい。

呼び出し方は簡単で、2本指でディスプレーをダブルタップするだけ。そのまま2本指でスワイプすると、拡大する位置を動かすことができる。2本指でダブルタップをした直後に上下にドラッグすると、倍率の変更が可能だ。ただし、あまり拡大しすぎると、何が書いてあるかわかりづらくなるため、上記の最大ズームレベルをほどほどの倍率に設定しておくようにしたい。

画面の一部だけを拡大できるズーム機能も、アクセシビリティ内で設定できる(筆者撮影)

このズーム機能も、ジェスチャーで呼び出すことができる。これを使いたいときには、「ズーム機能」を有効にした画面内にある「ハンドジェスチャ」をタップして、「ハンドジェスチャ」のスイッチをオンにすればいい。Apple PayやSiriなどのジェスチャーを割り当てている場合は、かぶらないようにジェスチャーを設定するといいだろう。先に紹介した設定の例では、「ダブルクレンチ」のジェスチャーを「なし」にしていたが、ズーム機能を使う場合は、空きを作っておくようにしたい。

アクセシビリティの奥にある設定も多く、なかなか開くことはないかもしれないが、ジェスチャー操作やヘッドフォン通知のように、普段使いできそうな機能も多い。特にジェスチャー操作は、組み合わせ次第でさまざまな操作ができ、カスタマイズの幅が広い。Apple Watchを使いこなすうえで、ぜひ試してみたい機能と言えそうだ。

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