海を越えた11歳の男の子の手紙 米アフラックCEOを動かす
がん保険大手のアフラックが小児がん患児を支援するために米国で開発したアヒル型ロボット「My Special Aflac Duck」が、このほど日本の小児がんの子どもたちにプレゼントされた。
きっかけになったのは、かつて小児がんと闘った11歳の男の子から、同社のダニエル・P・エイモスCEO(最高経営責任者)に渡った1通の手紙だった。
「TIME」誌が選んだ2018年トップ50の発明に
アフラックは2018年から、米国でアヒル型ロボットのMy Special Aflac Duckを小児がんの子どもたちにプレゼントする活動に取り組んでいる。
このアフラック・ダックは2016年、子どもたちの不安をやわらげるとともに、コミュニケーションのツールとして、アフラックと米国でロボットの設計、開発をするSproutel社が共同で開発した。周囲が大人ばかりの環境にあって、治療中の小児がんの子どもたちの中には、同世代の子どもたちと自由に遊ぶことができず、自分の感情を素直に表現するのが苦手な子もいる。そこで、症状が一時的に落ち着き安定した状態になってきたときに、感情をスムーズに表に出せるようにと、このアフラック・ダックをつくった。
高さは約20センチ、一見ぬいぐるみのようだが、最新のロボット。やさしくなでると、ダックも応える。感情を表す7つの丸いカードが付いていて、ダックの胸元に当てると、その感情を表現する。子どもたちから周囲へ自分の感情を伝えることができる。やさしくなでると、ダックも応えてくれたり、音楽にあわせて踊ったり。ダックが居眠りをしたとき、尾羽をさわって起こしてあげることもできる。
さまざまな機能を搭載した最新ロボットとして、米国で2018年のCES(Consumer Electronics Show=全米民生技術協会が主催する電子機器の見本市)で、「Tech for a Better World Award」に選ばれたほか、雑誌「TIME」誌が2018年トップ50の発明に選ぶなど、高く評価されている。
小児がんの子どもが扱うため、開発には神経をつかった。米国で小児がんの子どもや医療関係者など100人以上の協力を得て、1年以上のテストを繰り返し、昨年から米国で小児がんと診断された3~13歳の子どもに無償で提供しはじめた。米国ではすでに3000羽が子どもたちに贈られている。
そうしたなか、米見本市を紹介した記事を見て、アフラック・ダックの存在を知った男の子がアフラック生命保険(日本法人)の社長、古出眞敏さんに「日本でも早くMy Special Aflac Duckを」との手紙を出した。男の子はロボットのアフラック・ダックが米国の子どもたちにプレゼントされていると知り、手紙を書いたのだ。
手紙は古出社長からエイモスCEOにも渡された。2019年5月22日に開かれたMy Special Aflac Duckの贈呈式に出席するため来日したエイモスCEOによると、米国での展開を踏まえ、日本でも2020年からの提供を検討していたが、それを1年前倒しした。
「手紙を読み、彼の気持ちに早く応えようと、日本での提供を前倒しすることにしました」と、エイモスCEO。
男の子の手紙が、エイモスCEOを動かしたのだ。