【本日発売】「グランツーリスモ」シリーズ最新作! よりリアルなカーライフを、より親切な機能を追求した「グランツーリスモ7」をレビュー!
2022年3月4日(金)、リアルドライビングシミュレーター「グランツーリスモ7」がソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)より発売された。本作は「グランツーリスモ」シリーズの最新作にして、同作が25年間で培ってきた技術の集大成となるタイトルだ。今回は、本作の発売直前にプレイしたレビューをお届けしたい。なお、レビューをするにあたっては、本作のキャンペーンモードにあたる「カフェ」を最後までプレイした。
さまざまな施設が集まる拠点がゲームの軸
本作では、いくつかの施設が集まった拠点をベースにゲームを進めていく。世界中のコースを収録した「ワールドサーキット」、キャンペーンモードにあたる「カフェ」、中古車を販売する「ユーズド」、2001年以降の車を購入できる「ブランドセントラル」、車用のパーツがそろう「チューニングショップ」など、種類はさまざま。
ゲーム開始直後では、ほとんどの施設はロックされているため、まずはカフェを進める必要がある。カフェでは「メニューブック」に書かれたお題をクリアしていき、その報酬として、施設の機能が解放されたり、車をプレゼントされたりする。課題のほとんどは特定の車の収集で、上位入賞で車がもらえるレースに参加するか、拠点内の店で購入するのが基本。買ったほうが簡単ではあるものの、代わりにゲーム内通貨の「クレジット」を湯水のように使うことにある。毎度購入しているとカスタマイズに回すお金がなくなりがちなので、個人的にはドライビングの練習も兼ねてレースすることをオススメしたい。
施設の解放もあるが、カフェの魅力は車の知識を学べる点にある。課題をこなすと報酬がもらえるいっぽうで、「日産のスポーツカー」や「マスタング」といった、プレイヤーが集めた車に共通する話題をルカという人から聞ける。
その車が発売された年を始め、レースにおける実績や販売された台数、それらが世界に与えた影響といった、話題性のある話をまとめてくれるので、車に疎い筆者のような人間でも興味が持てる。具体的な話に加え、現代や20世紀初頭の写真も必要に応じて交えており、読み応えもある。単に車好きを強調するのではなく、どうすればより多くの人々に魅力を伝えられるかまで考えられていて、開発者側の熱意を感じられた。
手に入れた車は「図鑑」で確認できる。歴史や特徴が細かく書かれ、資料としても価値がありそうだ
カフェは、ゲームを通してドライビングと車の歴史を学べる、いわば教材のようなモードとなっている。レーシングドライバーとして世界中を転戦するというわけではないので、バリバリのレースものを期待している人には、ちょっと肩透かしに感じるかもしれない。だが、車に関する知識を、やさしく、深く教えてくれるわけで、そういう意味で「グランツーリスモ7」の「カフェ」モードは、車好きから初心者まで受け入れられるものと言えそうだ。
リアルな画質とドライビングが生む没入感
リアルドライビングシミュレーションを掲げている「グランツーリスモ7」では、徹底的に現実になぞらえたレースが楽しめる。伝説的なF1ドライバーのルイス・ハミルトンを始めとする多くのアドバイザーの助けを得て、レース中の車の挙動や、気候や風向きによる影響がゲーム中で再現されている。
天候はリアルタイムで変化するため、コース上で降っていた雨が途中で止むこともあるし、場所によっては水たまりが乾く速度に違いが出るなど、現実を再現するための作り込みはすさまじい。車体に残った雨粒や車内に配置された計器類の動きも確認できた。今回筆者が遊んだのはPS4版なので、PS5版に実装されている「レイトレーシング」(光の反射などを反映する技術)にはお目にかかれなかったものの、それでも本作の画質や質感の高さは十分に理解できた。
実在するものから「グランツーリスモ」オリジナルまで、全34種のコースが用意されている
つまりドライビングでも現実同様のテクニックが求められるわけで、おおざっぱな操作はレースで命取りになる。本格的なレースゲームが久しぶりだった筆者は、まず最大速度からドリフトでカーブを曲がるクセを直さねばならなかった。カーブ前では減速し、曲がりきる直前あたりから加速していく。そうした技術は一見なんのこともないが、実際は繊細な動作が求められる。
コーナーの角度に応じたブレーキとハンドルさばきを間違えれば、すぐにコース外に出てしまう。遅れたタイムを取り戻そうとアクセルを思い切り踏み込むと、今度は急な加速のせいで曲がるどころではない。直角かそれ以上に鋭いコーナーがあれば、住宅街の路地を徐行するような遅さで進んでいかざるを得ない。そのほか、たとえゆるやかなカーブであっても、速度を出し過ぎているとわずかな揺れで車体がバランスを崩し、そのままスピンすることもある。レース中は、一時も油断できない。
世界有数の難関とうたわれるコ―ス、ニュルブルクリンク。2種類あるうちのひとつ「北コース」は全長が約20kmに渡る
試行錯誤をくり返していくうちに、ひとりでも多く抜いてやりたかったほかのAIたちと、いつの間にか同じ動きをするようになっていた。AIたちがコーナーを決まった角度と速度で走るのは、妥協や手加減ではなく、むしろタイムを縮めるための必要なテクニックだったわけだ。変に走りを変えたところで意味はなく、基礎こそが最も強い。本作はドライビングをゲーム的にデフォルメするのでなく、ドライビングをリアルに追求しているからこそ、このような結果に行き着いたのだと思える。
相手のぺースに乗せられたり、場の空気に緊張した結果、本来の力が発揮できないことを「呑(の)まれる」と表現するが、本作ではその呑まれることの緊張感を味わうこともできる。最終ラップの後半で先頭集団に追いついたとき、コーナーで抜こうと欲を出したら、もう勝てない。加速したとたん、それまで保っていたバランスが一瞬で崩れ、車はスピンするし、自分の中のペースも乱れてしまった。一度崩したリズムを立て直すのは大変で、筆者からすると、最終ラップでやらかしたら即やり直しだ。
1位を意識すれば1位にはなれない。自分のペースを守ることの重要さを、本作で思い知ることとなった。カフェでもらえる課題も、後半になると強力な車が増えてきて、序盤でできたごぼう抜きも難しくなり、上記のようなミスが増えがちだった。
ダート系のレースでは、舗装されていない道を走る。サーキットとは違って滑りやすく、車体の制御が難しい。ドリフトをしたり、速度によっては跳んだりと、激しい走りができるのも魅力と言える
雨が降って「ウェット」になった状態のコースで走るとなると、緊張感はさらに増す。路面が滑りやすいので加速も減速も難しい。レーシング用のドライタイヤなどで走ると、ゆるいコーナーでさえ車体が左右に揺れる。ウェット用のタイヤに換えるだけでグリップ力が増し、操作性も相当楽にはなるが、先頭車の水しぶきでこちらの視界が遮られたりするので、やはり難しい。
だが、そうした状態を維持して走り続けているということは、つまり自分の力量も相当なわけで、成長を感じられてうれしくなる。リアルなレースを生み出すために追求された現実感が、没入感とストレスのどちらを与えるのかは人によるが、少なくとも筆者にとっては世界に没頭できるいい要素だった。
初心者向けのモードや機能も充実
ドライビングに求められる繊細さが求められるいっぽうで、本作にはレース系のゲームが苦手な人向けの要素も多く盛り込まれている。
拠点のひとつである「ライセンス」では、さまざまな目標に沿ってレースを行う。これからレースを始める人向けのモードで、発進からの停止といった基礎中の基礎から、角度の異なるコーナーでの曲がり方、ダートでの走り方といったテクニックが要求されるものまで数多くそろっている。
それぞれの目標はかなり短く区切られており、1回につき1分もあれば終わらせられるため、かなりお手軽。国内B級~スーパーライセンスまでの5段階に分けられ、B級から順にクリアしていくことになる。昇級するには、その級のすべての目標をクリアしつつ、卒業試験に合格しなくてはならない。
言い方を変えれば、卒業試験をこなせる腕があれば、確実に次のライセンスを取りに行ける。自分の腕前が上がっていく感触を確かめながら、少しずつ上のレベルに挑戦していくことが可能だ。各目標には、クリアタイムごとにゴールド、シルバー、ブロンズのバッジが設定されており、ブロンズかゴールドで各級のライセンスを制覇すると、報酬として車を入手することもできる。車の収集とトレーニングも兼ねて、初心者ならぜひ挑戦してほしい。
「ミッション」では、提示された条件をクリアしていく。ライセンスと似ているが、こちらはより実戦向け。腕試しにもちょうどいい
走行中のアシスト機能も多い。アシストセッティングには「初心者向け」と「中級者向け」、「上級者向け」があり、それぞれでアシストの対象となる項目が違う。「初心者向け」では適切な位置でのブレーキやハンドルの切り過ぎを自動で助けてくれる。さらにブレーキを行う場所や、走るべき位置を示すマーカーも表示可能。自信がなければ、まずは初心者向けのアシストを使って慣らすといいだろう。
ただ、AIによる補正にも限界があるので、走行タイムを気にするようになってきたら、せめてブレーキとハンドルのアシストはオフにしたい。アシスト機能は項目ごとに個別に設定できるので、自分のプレイスタイルに合わせて決めるのもオススメだ。筆者の場合は、ブレーキとハンドルの補正は早々に消して、車の位置取りとブレーキの場所を示すマーカーだけを残した。
さまざまなパーツを組み合わせて車体をカスタマイズ
拠点にあるチューニングショップでは、60種以上のパーツがそろっている。「スポーツ」、「クラブスポーツ」、「セミレーシング」、「レーシング」、「エクストリーム」という5つのカテゴリーがあり、基本的にこの順番でより性能の高いパーツが売られている。最初はスポーツ系しか買えないが、車を集めて「コレクターズレベル」を上げると、少しずつ解放されていく。
パーツを変えると車の「PP」が上下する。PPはパフォーマンスポイントの略で、車の性能を示している。基本的には、これが高い車ほど速い。総排気量や最大トルク、パワーウェイトレシオといった細かな項目が並んではいるが、少なくともカフェの最後の課題をクリアした時点では、PPをとにかく優先してあげれば問題なかった。
「GTオート」では車体の調整が可能。劣化したエンジンオイルや車体を交換できる
「カーセッティング」では、手に入れたパーツの付け替えやさらに細かい調整も可能。サスペンションを換装し、車高を1メモリ単位で変えられ、車体前後に取り付けられる空力パーツの位置も変更できる。これらの調整はPPに影響するほか、運転時の感触も変わる。走行タイムを縮めたり、オンラインプレイで世界と戦うには、車や自分のスタイルに合わせた緻密なチューニングも必要になるだろう。ただ、ここまでくるとやり込みの領域なので、まずはパーツのカスタマイズという大きな部分で慣れていきたい。
とはいえ、本作のレースには参加条件があり、なかにはPPの上限も。PPで引っかかった車は、そのレースで使うことはできない。だが、チューニングショップで売っている「バラスト」と「パワーリストリクター」を使い、重量を増やしたりエンジン出力を絞ることで、PPを下げることができる。強化した愛車1本で行きたいというプレイヤーも安心だ。
「スケープス」では車の写真撮影が可能。2,500以上の撮影スポットを選べるほか、演出や効果を細かく調整できる
シミュレーターとして、レースゲームとして25年の歴史を持っている本シリーズだが、その歴史に甘んじることなく、「グランツーリスモ7」は車の操作を知らない人への配慮も凝らされている。アシスト機能やライセンスのおかげで初心者にとっては遊びやすく、リアルなドライビング要素や数値までいじれるチューニングにより、上級者向けのやり込みがいもある。シリーズの集大成として作られた本作を、ぜひ遊んでみてほしい。
(文・夏無内好)
※オフライン時はアーケードモードのみプレイできる。
※早期購入限定の内容物のダウンロードコンテンツのプロダクトコード有効期限は 2022年8月4日(木)まで。プロダクトコードの使用には、インターネット接続および PlayStation Network のアカウントが必要。
※そのほか注意事項やアップグレード等については、公式サイトにて。
■グランツーリスモ7 25周年アニバーサリーエディション(パッケージ)
インターネットPS5向けソフトウェア「グランツーリスモ7 25周年アニバーサリーエディション」パッケージ版を購入すると、PS4向けソフトウェア「グランツーリスモ7」ダウンロード版を入手できる。
※オフライン時はアーケードモードのみプレイできる。
※早期購入限定の内容物のダウンロードコンテンツのプロダクトコード有効期限は 2022年8月4日(木)まで。プロダクトコードの使用には、インターネット接続および PlayStation Network のアカウントが必要。
■グランツーリスモ7 25周年アニバーサリーデジタルデラックスエディション(ダウンロード)
PS5・PS4向けソフトウェア「グランツーリスモ7 25 周年アニバーサリーエディション」ダウンロード版を購入すると、PS5向け「グランツーリスモ7」ダウンロード版およびPS4向け「グランツーリスモ7」ダウンロード版を入手できる。
※内容・仕様は予告なく変更になる場合あり。
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