政治スタンスや安全保障巡り 候補者が候補者に聞く【沖縄1区クロス討論】

(右から)赤嶺政賢氏、国場幸之助氏、下地幹郎氏

 31日投開票の衆院選まで残り6日となった。沖縄タイムスは候補者の政策論議を深めるため、紙上クロス討論を実施した。各候補から対立候補への質問を募り、回答を得た。沖縄1区では、共産前職の赤嶺政賢氏(73)、自民前職の国場幸之助氏(48)=公明推薦、無所属前職の下地幹郎氏(60)が、政治スタンスや安全保障、新基地建設などを巡って主張を展開した。(衆院選取材班) ■国場氏から赤嶺氏へ「台湾危機どう対処」 -共産党の綱領で日米安保廃棄、自衛隊解消をうたっているが、外交努力が破綻した際、台湾海峡、尖閣諸島の危機や国民の安全にどう対処していくのか。 「軍隊は住民を守らないというのが沖縄戦の教訓だ。東南アジアのような地域の平和協力の枠組みをつくることが最大の安全保障になる。自公政権は台湾海峡有事で安保法制を発動する可能性に言及しているが、沖縄と日本に戦争を呼び込む危険な動きはやめるべきだ」 -共産党は戦没遺骨を理由に普天間代替施設の南部の土砂利用に反対し、中城湾埋立、那覇空港、首里城、美ら海水族館の土砂利用を黙認したのはなぜか。 「戦争で無念の死を遂げた戦没者が眠る地域の土砂を米軍基地の建設のために海へ投げ入れるという行為に、遺族をはじめ、多くの人々が『人間のやることではない』と感じているのだ。他の事業と同列視しているようだが、問題の所在を全く理解していない」 -オール沖縄は保守系議員や経済界が抜け、実質共産党である。衆議院選挙は政権選択選挙なので政権交代を掲げるなら、共産党を名乗らないのはなぜか。 「私は日本共産党の衆院議員で、そのことを隠したことなど一度もない。建白書実現の一点で幅広い県民が結集したオール沖縄の代表として立候補し、保守・中道・革新・無党派の人たちが応援に駆け付けてくださっている。事実に基づかない言動はやめるべきだ」 ■下地氏から赤嶺氏へ「最賃引き上げ策は」 -辺野古移設反対のために座り込み、シュプレヒコール、対案のない反対、政府との対話を行わない手法、裁判といった手法に効果はないと考えるが。 「政府は沖縄県が求める対話に応じるべきだ。対話に応じず、問答無用で工事を強行する政府に県民が抗議するのは当然だ。県民投票で7割以上が反対の意思を示している。民意が届く新しい政権をつくり、辺野古新基地建設中止、建白書実現に全力を挙げる」 -コロナ後の経済対策について、最低賃金1500円引き上げを掲げているが、具体的にどのような手続きを経て実現していくつもりなのか。 「最低賃金の引き上げには、社会保険料の事業主負担分の助成など中小零細業者への本格的な支援が必須と考えている。欧米でも同様の支援策を講じている。大企業による下請けいじめの規制も必要。生計費は都心と地方で大差なく、全国一律の最賃制度に改める」 -県民の命と暮らしを守ると言うが、日本と東アジアの安全保障として掲げる「道理に立った平和的安全保障」とは、具体的にどのように実現するのか。 「東南アジアでは東南アジア友好協力条約(TAC)を結びあらゆる問題を平和的な話し合いで解決することを地域のルールにしている。北東アジアにも同様の平和の地域協力の枠組みをつくることが最大の安全保障になる。憲法9条を生かした平和外交こそ必要だ」 ■赤嶺氏から国場氏へ「感染拡大の責任は」 -PCR検査を抑制し、東京五輪・パラリンピックの開催強行で全国にコロナ感染を拡大させた安倍・菅自公政権の責任をどう考えているか。 「ワクチン接種の推進と緊急事態宣言やマスク着用などの国民の理解により、コロナ感染者は全国的にも、確実に減少している。コロナ対策に対するご批判は十分承知しているが、今はワクチン接種の推進と経口薬の普及による収束を図ることが肝要と考える」 -菅政権の無為無策のコロナ対策に対し、7割の国民が「評価しない」と回答していることを自民党国会議員としてどのように受け止めているか。 「コロナ対策に対する国民のご批判は真摯(しんし)に受け止めている。今必要なことは、コロナ収束に向けたワクチン接種率向上と経口薬の普及、マスク着用などの公衆衛生への国民のご理解を図るため、政府は分かりやすい丁寧な説明が必要であると考える」 -自公政権が持続化給付金や家賃支援給付金を一回限りで打ち切り、一時・月次支援金の不備ループにも批判が集まっているが、どう受け止めているか。 「コロナ禍における県民や事業者の苦境を数多く見てきた。こうした声を踏まえ沖縄からの提案として新たな経済対策として、地域・業種を限定しない事業継続・事業再構築支援を事業規模に応じて実施するなど、事業存続・雇用維持に大胆かつ総合的な支援を行います」 ■下地氏から国場氏へ「基地の負担軽減は」 -外務大臣政務官も務められたこの4年間の任期の中で、米軍基地負担軽減について「自らが提案し、実現し、結果を出した」施策はあるか。 「米軍機の安全性を高める仕組みや事故発生時の立入の迅速化を訴え、専門家会議設置や事故に関するガイドラインの改正を進めた。基地負担軽減には台湾問題の重要性と尖閣諸島の領有権を米国政府に認めさせること、コロナ対策で台湾を孤立させない取り組みをした」 -中小零細企業をはじめとして、観光立県である沖縄の産業の復興のために、具体的にどのような政策を提案し、結果を出していこうと考えているか。 「接種証明書を有効に活用し、経済を段階的に動かす。規模に応じた事業者への補償(固定費のみでなく、従業員の給与等も)、感染が収まるまでの雇調金の延長、劣後ローンや債務返済の期間・据え置き期間の延長などを実施し、感染症からなりわいと暮らしを守る」 -衆院議員を3期務められてきた中で「自らが提案し、行動し、結果を出した」離島振興策はあるか。 「離島の製糖工場の現状に鑑み、働き方改革の特例措置導入、適用要件緩和を実現した。また、過疎地域自立促進特別措置法改正で、沖縄県内半数以上の町村が7年間の国の財政支援の経過措置期間となり、手厚い経過措置も組み込み自治体の持続的発展の道筋を付けた」 ■赤嶺氏から下地氏へ「辺野古移設容認か」 -カジノ・IRを巡る汚職事件で、贈賄側はあなたに100万円を提供したと明らかにしているが、政治的・道義的責任を明らかにすべきではないか。 「下地幹郎はIR汚職に関与していない。裁判の中でもそれが証明され、説明責任をしっかりと果たし、収支報告書の訂正を行った。これらが、客観的な事実だ。正々堂々と共産党だと表明せずに政権交代を県民に訴えることに、政治的・道義的責任はないのか」 -自民党を離党後、各党を渡り歩き、IRで維新の除名処分を受けると自民党への復党を働き掛けている。あまりにも県民・有権者を愚弄(ぐろう)する姿勢ではないか。 「裁判結果から除名処分撤回を求める上申書を維新へ提出済み。自民党の山中貞則氏を師と仰ぎ、国民新党で亀井静香氏の指導を受け、地方分権を進めるために維新の橋下徹氏と合意。人との出会いが私を育ててきた。今後もそれを大切にしながら政治の道を歩む」 -辺野古新基地建設を巡り、かつて県民投票や反対を表明したこともあったが、自民党への復党を求める以上、同党の推進の立場を容認するということか。 「国と協議をしながら、米軍基地負担軽減についての自らの考え方を提案することは可能だ。私は6年かけて馬毛島への訓練移転で沖縄の米軍基地負担軽減を実現する道筋をつけた。これからも、どうすればさらなる負担軽減を実現できるのか提案をし結果を出す」 ■国場氏から下地氏へ「保守分裂 自ら促進」 -選挙の度に基地政策の内容が変わるのは国政を担う政治家として、外交、安全保障という重要な政策でブレているとの指摘があるが、その見解は。 「故翁長雄志知事は辺野古賛成から反対に回った。国場氏は辺野古賛成から反対に回り、再び賛成へと回った。これは辺野古問題が解決していないため、致し方ない。だからこそ、解決のために新たな提案をすることは当然であり、ブレているとの指摘は当たらない」 -保守合同は賛成で各首長選挙でも連携しているが、氏の復党問題とは無関係で、国会法と組織決定により復党不可能であるが復党を画策したのはなぜか。 「私の復党は、国会解散後に行う行為であり、国会法には一切抵触しない。経済界が保守合同を行おうという趣旨に対し、自民党県連は、会談を行わずに否定した。そのことは保守中道の分裂、つまり、オール沖縄に利する行為を行ったとしかみえない」 -自民党復党には党員、所属議員の信頼を得るべきだが自民党公認選挙区で立候補を表明、強行する反党行為で保守分裂を自ら促していることへの見解は。「保守合同を唱える国場幸一会長との公式会談を一切拒絶した行為が問題であり、保守中道分裂の原因は、自民党沖縄県連である。保守分裂を収めるために、幅広く保守中道を集める役割を下地幹郎が担うことになった。そのための選挙だ」

最終更新:沖縄タイムス

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