ニュース 検儀谷区が地区公民館に新電源システム 南房総(千葉県)
独自電源システムが導入された公民館前で区役員ら=南房総
3年前の台風による長期停電は、房州の人々の暮らしを直撃した。強風による家屋の被害も痛手だったが、家電製品が一切使えず、情報もなく、夜間に明かりのない不便さを痛感した。何より日々、真っ暗闇で過ごす不安が、人々の心に暗い影を落とした。南房総市の検儀谷区(後藤規雄区長、38世帯)は、地区公民館に太陽光発電による常夜灯システムを導入、地域の避難所としての機能を強化させた。区独自の対応で、住民が主体となった防災拠点として、優良事例となりそうだ。停電で真っ暗な中で、被災生活をした房州の人々。日常生活がストップし、情報入手も困難になった。自宅だけでなく、避難所も停電という八方ふさがりの状況に、電力のありがたさを痛感した人も少なくない。検儀谷区では、あの台風で地区公民館「ほのぼの館」に避難した人はいなかったが、停電での打撃は区役員、区民とも共有していた。今後も大きな天災がないとは言えず、地区の拠点となる公民館を停電から守るのが最優先という意向が固まった。▽避難場所として365日、照明があること▽室内が懐中電灯なしで自由に行動できること▽テレビ、ラジオ、スマホなどで情報が取れること▽災害時でも電源システムとして機能すること――などを条件に電源システムを構築することに。とはいえ、世帯数も少なく、予算は限られていた。市へ補助金を申請し、区予算の独自財源も確保した。金額面から業者への発注ではなく、区民でできることを模索した。設置後のメンテナンスも区民ができることを条件とした。エンジン発電機購入という選択肢もあったが、稼働日数の問題や日々のメンテナンスの面で、太陽光発電を選んだ。
導入された電源システム=同
区民に専門技術者がいたことから、外壁に太陽光パネルを設置、専用バッテリーでの充電システムを立ち上げた。発電効率の面からは屋根への発電パネル設置が望ましいが、高齢住民も多く、将来のメンテナンスが難しいため、手の届く南側垂直壁面にパネルを設置した。照明は発光ダイオード(LED)電球で2系統。インバーター、充電設備も2系統に分け、切り替えるシステムで、バッテリーの劣化を防いでいる。テレビ用電源やスマホの充電にも対応している。光センサーを導入しているから、室内は夜間のみの点灯となり、常夜灯として、防犯性も高めている。すでに実用段階に入っており、充電能力は実証済み。装置近くに、管理者の連絡先も明記し、区民が安心して使えるよう配慮した。後藤区長は「メンテナンスを含めて、区民自身でできることを模索した。今後はバッテリーの消耗度を見ていきたい。この避難所を使うような事態はないに限るが、常夜灯があって、停電でも安心な公民館があることが、住民の心の支えになると思う」と話している。
房日新聞