ニュース記事 | トップ| 溶接ヒューム令改正、現場での対応示す、日本溶接協会が具体策発表
日本溶接協会(日溶協)は12月7日、東京・千代田区の同協会本部に所属する各部会・委員会の代表者を集め、「金属アーク溶接作業等における特定化学物質障害予防規則の概要および対応」を会員向けに発表した。これは厚生労働省が今年4月に法令(労働安全衛生法施行令)、省令(特定化学物質障害予防規則=特化則)を改正・公布したことによるもので溶接事業者が事項とその対策などについて詳細にまとめている。 同法・省令改正は、厚生労働省の調査により、溶接ヒューム中の塩基性酸化マンガンが労働者に神経障害による健康障害を及ぼす可能性があることが判明したことから改正されたもの。これにより溶接ヒュームは特化則の物質に指定され、溶接中のマンガン濃度が指定された。 また、溶接事業者には、溶接ヒュームの濃度測定、全体換気の見直し、有効な呼吸用保護具の選定・使用、呼吸用保護具のフィットテストなどが求められるようになった。 今回の発表は、来年4月の同法・省令改正施行を前に会員各社が取り組みを進めるにあたり、その参考として日溶協安全衛生・環境委員会がまとめた資料などを基に対応策を詳説した。 今回の発表における主な内容は次の通り。 ▽溶接事業者(屋内作業場)は何を行うべきなのか=溶接事業者(継続して作業を行う屋内作業場)が行うべき事項は、「溶接ヒュームの濃度の測定等」、「全体換気の見直し」、「溶接ヒュームの濃度の測定等(2回目)」、「有効な呼吸用保護具の選定」、「フィットテスト」の5項目。 ▽溶接ヒュームの測定等はどのように対処するのか=溶接ヒュームの濃度測定は「第一種作業環境測定士」が行う業務となる。方法としては事業所単位で2人以上を選定し、「個人ばく露測定」という計測法で測定する。自社で作業鑑定測定士を雇用して計測するなどの方法も考えられるが、測定機器を購入・維持するコストは高額になるため、現状では第三者機関へ委託するのが現実的である。溶接ヒュームの濃度測定等は溶接業務の内容や業務スペース等に変更がない場合は、一度の計測でよいとされている。 溶接ヒュームの濃度測定の委託先としては日本作業環境測定協会や中央労働災害防止協会が代表的。資格の発行元となる日本作業環境測定協会のホームページからは、測定を実行できる企業を知ることもできる。 ▽なぜ2回の溶接ヒューム濃度の測定が推奨しているのか=全体換気の見直しの後、「溶接ヒュームの濃度の測定等(2回目)」を推奨していることについて。換気を見なおすことで溶接業務の労働者全員が装着する呼吸用保護具が変化するため、一度測定し、換気の見直して改善、再度測定を行うことで最適な状況で溶接業務に臨めるとしている。 全体換気については、「これと同等以上の措置を講じる」とされているため局所排気装置、プッシュプル型換気装置などが含まれる。換気を見なおすことで溶接業務の労働者全員が装着する呼吸用保護具が変化するため、一度測定し、換気の見直して改善、再度測定を行うことを推奨する。▽N95規格を取得いているマスクを使っていれば大丈夫なのか=「呼吸用保護具の選定」については、防じんマスクの種類と指定防護係数(PF)で決まり、PF=作業環境中の有害物質濃度/呼吸用保護具内の有害部室濃度で計算される。知名度は高いが、米国規格であるN95は、溶接業務において、使用を国内法規(粉じん則)では認められていない。呼吸用保護具の選定の場面で溶接事業者に求められるのは、法律上は、あくまで日本規格であるDS2などの日本規格で定義されている製品だ。同等の性能とされていてもN95ではなく国家検定を受けているマスクを選ぶ必要がある。 防じんマスクには使い捨て式や取り替え式などがあるが、継続したアーク溶接等作業において日溶協が推奨しているのいは取り替え式の防じんマスク。 ▽フィットテストとフィットチェックの違い=フィットテストの義務化は2023年から。22年の4月から義務化される溶接ヒュームの濃度測定、全体換気の実施などから1年遅れで義務化される。フィットテストとは労働者の顔面と呼吸用保護具の面体の密着の程度を示す係数のこと。溶接業務の前に個人が行う「防じんマスクの吸気口をふさいで、息苦しくなったから密着度は問題ない」などがフィットチェック(あるいはシールチェック)で別物となる。フィットテストの合格ラインは空気の面体と顔面との間の漏れ率が1%未満のため、正しい呼吸用保護具の装着法を知らなければ達成するのは困難だろう。達成しないと溶接業務を行うことができないため、フィットテストを担当する実施責任者は今のうちに呼吸用保護具の装着方法を確かめておくのが有用だ。 また企業は「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を終了した者の中から選んだ特定化学物質作業主任者を選択し作業現場の管理を行う。フィットテスト実施責任者がフィットテストの状況を記録することが義務化されている。フィットテストの対象となるのは、溶接に従事する全員で、最低でも年に1回の実施とされる。 ▽発生する溶接ヒュームの少ないティグ溶接(アルミ溶接を含む)しか行っていない場合=今回の法改正は、マンガンではなく溶接ヒュームに対してのものなので、ティグ溶接しか行っていなくとも例外にはならず、溶接ヒューム濃度測定やフィットテストなどを行わなくてはならない。
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