ニュース記事 | トップ| 宮富士工業、溶接技能伝承へ傾注「教えるは覚えるの道半ばなり」

 原子力プラントやプラント設備の製造を手掛ける宮富士工業(宮城県石巻市、後藤春雄社長=宮城県溶接協会会長)に在籍する高橋茂男氏が第一回、?橋秀昌氏は第二回日本溶接協会マイスターに認定された。両者ともに同社の主業務である原子力発電プラント向け装置など厳格な溶接品質が求められる溶接で養われ、宮城県溶接技術競技大会を制した溶接技能の高さに加えて、同社が長年実施している地元の高校への溶接指導など次世代に溶接技能を伝承する活動への貢献などが評価された。同社は経営者でもある後藤社長も黄綬褒章、現代の名工(アーク溶接)を受賞するなど国内屈指の高度熟練技能をもつ溶接のスペシャリスト集団で「教えるは覚えるの道半ばなり」を実践し、溶接の草の根を広げる活動に尽力する。 タンクやダクトなどのプラント設備の設計・製造から据付工事までを行う同社の溶接は半自動溶接が多く、普通鋼やステンレス鋼を中心に薄板から数十ミリの厚板まで様々な製品を接合する。近年ではティグ溶接を適用する製品もあるという。 同社では溶接箇所が母材と同等以上の強度が要求される原子力発電プラントの案件において3・2ミリの薄板で半自動溶接による完全溶け込み溶接などを行うケースもある。 溶接を一方向から連続的に行う方法を用いて薄板で完全溶け込み溶接を行うと熱量によって大きなひずみが発生し、構造物も変形してしまう。そのため、同社では溶接時の熱量を分散させることに有用な飛び石法などを用いて溶接を行うなどひずみを抑制する工夫を行っている。 また、突発的な案件ながら船舶のエンジンなどの鋳物の補修溶接を行うこともあるほか、稀にチタン合金などの難加工材の溶接も実施することがあるため多種多様な溶接事に対応する柔軟な技能も必要で、日本溶接協会マイスターである高橋茂雄氏、?橋秀昌氏の両氏が「長年、溶接を行ってきたが、当社の溶接は難しいと感じる案件が多い。常に試行錯誤と鍛錬を重ねながら一つ一つの工程を丁寧に行っている」と口をそろえて語るように同社では高度な溶接技能と技術が求められる。 そのため、同社に所属する溶接士も精鋭揃いで、後藤社長と日本溶接協会マイスターである高橋茂雄氏、?橋秀昌氏の両氏の3人が厚生労働省のものづくりマイスターに認定されているほか、上級技能者の証とされる国家資格「鉄工技能士・鋼構造物鉄工作業1級」取得者が6人在籍する。 こうした高度な技能習得には後藤社長の座右の銘である「教えるは覚えるの道半ばなり」を実践している部分も大きい。「人に指導する場合正しい技術や技能を教えなければならない。そのためには自分自身の技術や技能を振り返り、足りない部分を鍛え直す必要がある。人を指導するということは自分自身の更なる成長にも繋がる」と後藤社長は語る。 「教えるは覚えるの道半ばなり」通り、同社は高度な技能と技術を他の溶接事業所や若年世代に指導する活動に傾注しているのも特徴だ。 他の溶接事業所から、溶接修行として同社に出向するケースもあるほか、地元高校への溶接指導についても、後藤社長を筆頭に約20年前から先陣を切って実施。また、近隣の小学生にものづくりの楽しさを伝える「イシノマキッズ・トライ授業」という体験授業も2016年から開催している。 後藤社長は「溶接技能は共有財産であり、一つの企業が独占するのではなく、広く伝承していくことで地域と産業および次世代の繁栄や発展に繋がる」とその意図を語る。 同社は10月に公開され観客動員数が60万人を突破した佐藤健氏、阿部寛氏共演の映画「護られなかった者たちへ」(松竹、瀬々敬久監督)では撮影場所として提供し、映画でも佐藤氏が演じる利根泰久役勤務先として実名で登場。同社の工場や事務所が作中に映し出されるほか、佐藤氏が同社の溶接士として実際に溶接をするシーンもあり、後藤社長は佐藤氏に溶接を指導した。「映画内に当社や溶接のシーンが登場することで溶接業界に若者の目が向いて欲しいという思いから当社を撮影場所として提供した。映画も好評で遠方から当社への問い合わせもあるなど、注目度を集める成果があったのではないか」と語った。

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