JR東海の新型車両315系、安心・快適で親しみある車両に - 写真78枚
JR東海の新型車両315系。2022年3月に中央本線中津川~名古屋間で運転開始する
JR東海が新形式の通勤型電車315系の報道公開を12月3日に実施。外観・車内が公開されたほか、バリアフリー設備や冷房機能の向上、車内セキュリティの強化などの特徴に関する説明もあった。報道公開で撮影した写真とともに、315系について紹介する。【写真】新型車両315系の車内・外観と報道公開の様子(全78枚)新型車両315系は、「毎日多くの人に利用していただく車両だからこそ、誰もが優しさや安心を感じることのできる移動空間をご提供したい」との思いから誕生。エクステリアは「先進性×親近感」をコンセプトに、直線を使用した幾何学的な前面形状に高輝度LEDの標識灯を配置する一方、コーポレートカラーのオレンジとホワイトを調和させた配色で親しみを感じさせるデザインに。車内の座席はオールロングシートで、インテリアは「優しく安心感のある快適な移動空間」をコンセプトに、空間の広がりによる開放感を得られるデザインとした。315系は11月6日深夜にC1編成が日本車両(日本車輌製造)豊川製作所を出場した後、約1カ月間ですでに3編成が出場しているという。報道公開では315系のC2編成を使用し、国鉄時代に製造された211系0番台のK51編成と並んで展示された。今回公開されたC2編成は、1号車から「クハ314-2」「モハ315-504」「モハ315-4」「サハ315-502」「サハ315-2」「モハ315-503」「モハ315-3」「クハ315-2」となっている。配布されたパンフレットの主要諸元によれば、315系(8両編成)の車種形式 / 車種記号(略号) / 空車重量は、1号車から「クハ314-0 / Tc’1 / 34.5t」「モハ315-500 / M2 / 34.9t」「モハ315-0 / M1 / 37.0t」「サハ315-500 / T2 / 31.0t」「サハ315-0 / T1 / 30.4t」「モハ315-500 / M2 / 34.9t」「モハ315-0 / M1 / 37.0t」「クハ315-0 / Tc1 / 33.9t」とのこと。定員は1号車が133人、2~7号車が各154人、8号車が139人となる。車体長は20,100mm、車体幅は2,978mm、屋根高さ3,630mm、床面高さ1,140mm。最高速度は130km/h、起動加速度2.6km/h/s、減速度4.3km/h/s(常用最大)・5.1km/h/s(非常)。台車は「ボルスタレス台車・ダンデム式軸箱支持方式」、制御方式は「VVVFインバータ制御(異常時出力向上機能付)」、ブレーキ方式は「回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ」と記されている。保安装置として「ATS-ST」「ATS-PT(EB機能付)」「デジタル列車無線」「TE装置」「防護無線(自動発報機能付)」を搭載し、他に「振動検知装置」「車両・地上間のLTEデータ通信」を採用したとのこと。この315系に関して、日本車両の「N-QUALIS(エヌクオリス)」ブランドとして製作された最初の車両であることも紹介された。車内・車外においても、製造者名(日本車両)とともに「N-QUALIS」のロゴマークが見られる。「N-QUALIS」は「品質(Quality)」「保守(Lifelong)」「安全(Safety)」に磨きをかけ、進化させた次世代プラットフォーム。構体は表面を平滑化し、構造部材を効率良く配置することで強度を向上。構体シール箇所も大幅削減している。一体プレス式による重要溶接線長の削減を図り、高い走行安定性と優れた乗り心地を実現するNS台車をはじめ、車両データを活用して異常を早期に検知する状態監視技術も。315系の台車に関して、ツナギばりと横ばりを一体化した構造とし、313系と比べて台車枠の溶接箇所を6割削減した安全性向上台車とすることで信頼性を高めたとの説明もあった。315系では、車両・地上間のデータ通信装置を導入することにより、常時の状態監視を可能としている。315系全車両において、各機器の動作状況等をデータ化して地上(車両基地など)へリアルタイムに送信。サーバで自動分析を行い、作業員が結果を確認する。これにより、異常の予兆を検知でき、列車遅延の防止にもつながる。車両状態のデータをメンテナンスに活用することで、車両不具合の発生を抑制することもできる。車内設備の説明では、おもな特徴として「バリアフリー設備の充実」「座り心地の向上」「冷房機能の向上」「快適な車内空間」の4つを挙げた。バリアフリー設備については、車いすスペースを全車両に1カ所設け、車いすマーク・ベビーカーマークを床面に表示することでスペースを明確にしている。車端部等に設けた優先席も、一般座席と色分けして視認性が向上。車いす対応トイレは全編成に1カ所設置(報道公開されたC2編成は1号車に設置)。車両とホームの段差を縮小したほか、ドア上の車内案内表示器はカラーユニバーサルデザインに対応したフルカラー液晶ディスプレイとし、運行情報や駅情報など視覚的な表示を可能とした。冷房機能を向上させるため、国内初という「AIによる自動学習・制御最適化機能」を導入。従来車両は設定温度になるよう自動制御を行う一方、設定温度に追随できない環境の変化(混雑や湿度上昇など)が発生し、車内温度が高くなった場合、車掌が手動で設定温度を下げる必要があった。冷房機能をAI制御とすることで、設定温度を手動補正した時点の各種データ(車内温度、外気温、湿度、乗車率など)をAIが自動学習し、最適化した冷房制御パラメータを作成。これをもとに、空調をきめ細やかに制御し、快適な車内環境を維持するという。安全性の向上にも取り組み、従来車両から搭載している非常用ドアコックをはじめ、非常通報装置を1両につき3台、車内防犯カメラを1両につき5カ所設置して車内セキュリティを強化している。非常通話装置は、緊急時に乗客がボタンを押すとブザーが鳴り、乗務員と直接通話できる。非常通話装置が扱われた際、指令所へ自動で通知されるほか、車内防犯カメラの画像が運転台と指令所へリアルタイムに伝送されるため、異常時においても早期に確認し、迅速な対応ができるようになる。環境負荷の低減にも努め、電力変換装置に高効率なSiC素子を採用して電力消費量を削減。中央本線中津川~名古屋間、東海道本線豊橋~大垣間でのシミュレーション(最高速度120km/hで走行)の結果、315系の電力消費量は211系と比べて約35%低減したという。2022年夏以降には、JR東海の在来線車両で初となる非常走行用蓄電装置を順次搭載する予定。自然災害の発生等による長時間停電時においても、大容量のリチウムイオン電池で駆動システムを稼働でき、架線からの電力供給がなくても安全な場所まで自力走行で移動できるほか、車内で空調装置の動作も可能になる。報道公開では、JR東海の東海鉄道事業本部車両部長、杉山尚之氏が囲み取材に応じた。挨拶の中で、315系について「当社の在来線通勤型電車としては約22年ぶりの新型車両。車両の開発にあたり、安全性・安定性・快適性の向上、環境負荷の低減をめざしました。世の中のニーズをとらえるという観点から、バリアフリー設備の充実、そしてセキュリティにも配慮し、安全かつ安心してご利用いただける車両をつくることができたと考えています」と説明。「地域のお客様が日々使われる通勤型の車両となるため、快適に安心して乗っていただける車両をつくりたいと思いました。長く使ってほしい、親しみのある車にしたいとの思いからつくった車両でもあります」とコメントした。質疑応答の中で、315系の乗り心地に関する質問もあり、「今日紹介した台車は安全性向上のほか、乗り心地の向上という観点からつくった部分もあり、新しい技術も導入しています。私としては乗り心地が良くなったと思っています」「基本的に縦揺れが減り、しっかりした乗り心地になったのではないかと思います」と杉山氏は答えた。315系の運転開始日は2022年3月5日。中央本線中津川~名古屋間に投入され、2023年度中に同区間の車両を315系に統一(特急列車は除く)する。これにともない、報道公開で使用されたK51編成も含め、国鉄から継承された211系0番台(計8両)は2022年3月中旬に引退予定。その後もJR東海の発足初期に投入された211系・213系・311系を315系へ置換え予定としている。なお、中央本線中津川~名古屋間では現在、211系の他に313系も活躍中。車両を315系に統一することで、313系は「どちらかに移すことになると思いますが、詳細についてはいままさに調整をしている段階」(杉山氏)とのこと。その他、315系の投入後、コロナ禍で乗客数が減少する中での車両運用や、中津川~名古屋間の車両統一に伴う今後のホームドア設置に関する質問もあったが、いずれも「今後の状況を見つつ、お知らせできるタイミングが来たらご報告したい」との答えだった。
MN 鉄道ニュース編集部