コロナ禍で利用低迷のホテル、「新常態」需要獲得の突破口はどこだ|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社
コロナ禍でインバウンド(訪日外国人)やビジネスマンの出張などの利用が低迷しているホテル―。厳しい環境下、ベンチャーなど観光関連事業者が新しい価値創出を通じて、ホテルの稼働率や売り上げの向上につなげている。コロナ禍を受けて、ワーケーションやホテルワークといった、泊まるだけでなくさまざまな用途で使われる機会が増加した。ニューノーマル時代の需要を取り込もうと、さまざまなプロモーションを仕掛けている。(山下絵梨)
全国に「コンフォートホテル」などを展開するチョイスホテルズジャパン(東京都中央区、村木雄哉社長)は、ホテルを15分単位でフレキシブルスペースとして利用できるサービスを始めた。テレワークやランチ会、サードプレイスなど、多様な用途で使われる機会が増えていることを受け、ニューノーマル時代における新たなホテル活用を「新ホテ活」と定義してプロモーションを展開する。
ホテルの客室やラウンジ、朝食会場などをワークスペースとして提供する「Threes(スリーズ)」を運営するトーキョーサンマルナナ(東京世田谷区、八坂太洋社長)と連携し、対象ホテルにおいて期間中にスリーズ経由でワークスペースを利用すると、通常価格より最大半額で利用できるようにしている。
観音崎京急ホテル(神奈川県横須賀市)は、ガイアックスが運営する平日のホテルワーク予約サイト「Otell(オーテル)」と連携してワーケーションプランを提供したところ、1カ月全体の平日の稼働率が5%向上した。政府のテレワーカー増加目標や新型コロナウイルスによる就業形態の変化を受けて、在宅勤務者が増加していることを背景に、新規顧客の獲得や平日・シーズンオフなど閑散期の稼働率向上を実現した。
さらに1人での通常ワーケーションの利用のみならず、「複数人での利用やリピート利用にもつながっている」(観音崎京急ホテル)という。
政府は、旅行需要喚起策「GoToトラベル」について、2022年1月以降にも事業を再開する方針。平日の地域共通クーポンが優遇されたり、各自治体などでもワーケーションを利用用途に絞った多くの補助金を用意する見込みで、ガイアックスは「今までの週末や長期休暇一択の旅行から、分散旅行への推進が進んでいる」と指摘する。
コロナ禍で大きな打撃を受けた観光関連産業にとって、これを機にホテル利用が一層後押しされることが期待される。
日刊工業新聞2021年12月23日