近未来の駅スマートステーションが導く社会 JR西日本
利用者への案内や車いすでの乗降などで人手に頼ることが多い現在の鉄道駅が、最新の技術で自動化され、便利で効率的な?スマートステーション?へと進化を遂げようとしている。最先端の駅開発に力を入れるJR西日本は、大阪駅北側の旧貨物駅跡地の再開発で誕生する新しい街に令和5年春、「うめきた地下駅」(大阪市北区)を新設する。社外の技術やノウハウも取り入れ、この新駅で「近未来の駅」の実現を目指している。
「フルスクリーンホームドア」の試作機。ドア部が移動するため多種多様な車両に対応できるJR西は平成30年、20年後に同社がありたい姿をまとめた技術ビジョンを公表した。その実現に中堅・中小企業を含むグループ外企業との協業で取り組んできた。駅関連では、その成果も見え始めている。
代表例の一つである世界初の「フルスクリーンホームドア」は、油圧機器や自動ドアなどを手掛けるナブテスコとの協業で開発が進む。ドア部がふすまのように車両のドア位置に応じて自在に移動して開閉する機能を採用しているのが特徴だ。
「現行の固定されたホームドアは、車両の長さやドアの数、編成などが同じでなければ利用できないため、多種多様な車両が発着する駅では対応が難しい。開発中のホームドアは、こうした課題を解決する」(JR西の小森一・イノベーション本部うめきたPT担当課長)
開発が進む「段差解消機構」。列車が到着するとプレートが自動的に張り出してホームとの段差や隙間を解消するJR西が開業する、うめきた地下駅には特急電車や各駅電車、将来は他社車両の乗り入れなども検討されているため、まずはここにフルスクリーンホームドアを導入する計画だ。
ホームと車両の間にはどうしても一定の隙間と段差ができる。これを解消する「段差解消機構」はグループ会社のJR西日本テクシア、機械開発会社の小松製作所(長野県松本市)との協業で開発している。関東経済産業局が主催するロボットコンテストで技術を公募。小松製作所が提案する技術を採用した。段差解消機構は、列車が到着してドアが開くと、自動的にホームから張り出すプレートがホームと車両の間の隙間と段差を埋める。
「車いすを利用する顧客は乗り降りの際に駅員に支援を求める必要があった。段差解消機構が実用化されれば、車いすやベビーカーを利用する顧客の利便性は向上する」(小森氏)
他にも、大阪芸術大との協業でプロジェクションマッピングを使って駅構内の一部をやすらぎの空間に演出するプロジェクトにも着手。これらの成果を投入することで、うめきた地下駅を「近未来の駅」としてスタートさせたい考えだ。
一方、自社で開発してきた技術の社外での活用も模索する。JR西では自動改札機について、故障予測AI(人工知能)モデルを開発。その活用で、社内の保守コストを約3割低減させている。今後はこうした機械・設備の状態を監視して必要に応じてメンテナンスを行うCBM(状態基準保全)技術を、他の鉄道会社に提供するサービス事業として育成していく考えだ。
スマートステーションの実現については、JR東日本でもさいたま新都心駅(さいたま市大宮区)や高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)に自律移動型ロボットで警備や清掃、移動支援消毒作業などを行う実証実験を実施するなど、取り組みが加速している。(青山博美)
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