【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 7】ウマ娘のデザインの理由がわかると気持ちいいし運営が空恐ろしくなるってお話

 気がつけば夏競馬の時期になりました。

 宝塚記念が終わり、ふっと気が抜けるシーズンだったりしますが、新馬戦の楽しみに目覚めたら結局この時期も競馬から目が離せません。柿ヶ瀬です。競馬歴30年、『ウマ娘』によって勢いがついたからか今年からとうとう一口馬主にもチャレンジです。

 『ウマ娘』を1.8倍楽しくする当コラム、第7回は、原点に立ち戻って“このウマ娘のキャラクターデザインがスゴい!”です。そもそも実在のモデルがいるこの『ウマ娘』、競走馬の様々なところを切り取ってキャラクター化させているわけです。

 それは以前取り上げた勝負服だったり、その馬の実際の大きさだったりと、色々なエッセンスが入っています。今アプリで遊んでいてもわかるようにストーリーやセリフ、他のウマ娘との会話などにも様々な要素が隠されていますよね。

 しかし今から4年前、2017年の春に行われた“ウマ娘キャラクター名前予想クイズ”において、ビジュアルとセリフ一言、そしてツイートの文章しかヒントがない状態でウマ娘の名前を当てろ! という結構に無茶振りな企画がありました。それでも一応ほとんどのウマ娘は正解できたのですが。

 そんなヒントが少ない中で「あっ、このデザインってそういうことか!」と筆者が膝を打ったウマ娘のキャラクターデザインを何頭か紹介していきたいと思います。今回は4年前の思い出話をメインに据えている上に、あいも変わらずの妄想マシマシであることを予めご了承ください。

血統からエピソードまで。完璧さに拍手したくなるキャラデザのウマ娘

 まず最初のウマ娘はわがまま魔女っ子ウマ娘のスイープトウショウです。SRサポートでお世話になってる人も多いでしょう。

 スイープトウショウのわがまま娘なところはまさに実在のスイープトウショウそのまま。調教拒否してレース回避事件、天皇賞(秋)で返し馬の時にまったく動かなくなっちゃった事件、有馬記念でゲートに全然入らなかった事件など、わがままなエピソードには事欠かない馬でした。

 スイープトウショウを彼女にしたいですか? と質問されて、いやーキツイでしょ、と笑った主戦の池添謙一騎手、このスイープトウショウだったらどうでしょうか? さすがに幼すぎますか。

 話が脱線しましたがスイープトウショウにはもう1つの重要なファクターがあります。それは魔女っ子について。それはまずこの名前の通り、父のエンドスウィープから受け継いだスイープ(掃除する)から連想される箒から。そして同じトウショウの冠名を持つ母と祖母の名前から。母の名前はタバサトウショウ。そして祖母の名前はサマンサトウショウと言います。

 ある程度以上の年齢の人でないとピンと来ないかもしれません。タバサとサマンサという名前に何の意味があるのかと言うと、かつてアメリカで放送され、日本でも人気の高かったドラマ『奥さまは魔女』に登場する主人公の魔女の名がサマンサ、そしてサマンサと夫ダーリンの娘でこちらも魔女となるタバサ。おわかりでしょう。スイープトウショウは魔女っ子ウマ娘になるべくしてなった――このキャラクターデザイン以外になりえない! そう思わざるをえないような、いわば完成されているウマ娘なのです。

 サポートカードのイベントではスイープトウショウはまだ魔法に憧れているだけの女の子と言った感じですが、謎のVR技術があることが発覚したウマ娘世界、魔法が存在しないとも言い切れない。育成シナリオでどうなるか、楽しみにしたいと思います。

あのジョッキーの一言が、デザインに反映された!?

 皐月賞と菊花賞を勝ったものの、ダービーをわずか7cm差で逃したゆえに、もっとも三冠に近かった馬、準三冠馬などと言われるエアシャカールです。ダービーを7cm差で勝ったのがアグネスタキオンの兄であるアグネスフライトだったという話は以前した通りですね。

 さてそのエアシャカール、ウマ娘には実在のモデルが気性難の馬であったケースはいくつもあるのですが、その中でも先に紹介したスイープトウショウと並んでトップ争いが出来るレベルに気性難なのではないかと思います。あまりの気性の激しさから誰も調教に乗りたくないので、クジでエアシャカールの調教係を毎回決めるレベルだったと言われています。

 『ウマ娘』におけるキャラクターデザインを見ていただければわかる通り、確かに気性に難がありそうなアウトロー系の見た目になっていますが、しかしその実頭はキレるタイプ。

 なぜそうなったのかは理由がありそうなのですが、その仮説を語る前にちょっと別の話をさせてください。ここで注目したいのはエアシャカールの前髪の分け目。おわかりいただけますでしょうか。ギザギザになっていますね。まるで割れ目のように……。

 と、ここで実馬のエピソード。3歳時の神戸新聞杯の4コーナー、大外を進んでいるのに内へ行こう内へ行こうとしてしまい、鞍上武豊騎手は御すのに必死で3着まで。気性面での成長がまるで感じられないことに呆れた武豊騎手は思わずこのような趣旨の発言をしました。

 「彼の頭の中を見てみたい」

 もしかしたら、その武豊騎手の一言がウマ娘になるにあたって、この割れ目のようなギザギザ分け目というデザインに取り入れられたのかもしれません。さてここで先程申し上げた疑問に戻ります。なぜエアシャカールは気性難ながらロジカルな知性キャラになったのか?

【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 7】ウマ娘のデザインの理由がわかると気持ちいいし運営が空恐ろしくなるってお話

 実は、現在のプロフィールには書かれていないので今はもうなくなった設定になっている可能性も高いのですが、以前の公式サイトでの紹介では、特技がハッキングであるとされていました。

 頭の中を見る=ハッキング=天才キャラ

 安直? しかしこれが一番理屈が通るんですよね。もちろん真実はCygamesさんだけが知っていることなので、すべては筆者の妄想でございます。ちなみに「彼の頭の中を見てみたい」という武豊騎手のコメントについてなのですが、似たような趣旨のコメントで「頭を割って、中を見てみたい」という、プロ野球ヤクルトスワローズの元監督(現在横浜DeNAベイスターズのフェローという役職)であった高田繁氏が代走で牽制死をしてしまった選手に関して出したコメントと混同されがちです。ご注意ください。

※掲載時、高田繁氏の現役職名が間違っておりました。正しくは記載の通り“フェロー”となります。申し訳ございません。

デザインの意味に気付いた時にすべてが繋がる快感に震えたウマ娘

 2017年の“ウマ娘キャラクター名前予想クイズ”の時は、先に言った通り、ビジュアルとセリフとツイートの文章しかなく、それら限られた情報から名前を予想するというものでした。パッと見ですぐわかるウマ娘もいれば、これは誰だ……? と頭を悩ませるウマ娘もいました。

 ここで紹介するバンブーメモリーは、最初の5分ほど首を捻りながら悩みに悩んでいたのに、突然これがバンブーメモリーであることに気付くということがありました。

 どこで、どのようにして筆者がこのウマ娘がバンブーメモリーだと気付いたか、みなさんはおわかりになりますか? それは、明らかに異質な夢と書かれたハチマキです。最初に見てすぐここにヒントがあると思いましたが、しかしすぐに答えは出ませんでした。

 夢とは一体? 夢、即ちドリーム。ドリームがついている名馬はドリームパスポートやドリームジャーニーなどがいますが、イマイチ他の部分のデザインを見比べるとピンと来ません。ウンウンと唸りながら考えていると、ふっと頭の中に閃きが走りました。そもそも競馬で夢と言えばなんだ? そう、宝塚記念です。かつて元関西テレビ杉本清アナの宝塚記念での名物フレーズ「私の夢は○○です」。公平であるべき実況アナが思いっきり私情を挟んでしまう、グランプリレースであるからこその定番実況です。

 99年宝塚記念では、前年の優勝馬で、天皇賞(秋)に非業の死を遂げてしまったサイレンススズカの名を呼びました。94年宝塚記念では、筆者の愛するマチカネタンホイザの名を呼び、筆者を喜ばせました。そんな「私の夢は○○です」のフレーズを最初に言ったのは、91年の宝塚。

 「私の夢は、バンブーです」

 そう思うと、今までハチマキしか見えてなかった筆者に、手に持った竹刀が飛び込んできます。これ、要するにバンブー(竹)じゃないか……。そして勝負服、白と黒のストライプ。そうだ、これはバンブー冠名の勝負服からのデザインだ……!

 一瞬ですべての要素が繋がりました。そう、やはり夢のハチマキこそが、このウマ娘のキャラクターデザインのキモでした。このウマ娘こそ、夢という一文字を抱くにふさわしい、宝塚記念で杉本清氏が私の夢だと最初に語った馬、バンブーメモリーのウマ娘としての姿だったのです。

 夢のハチマキの謎を解いた時の気持ちよさは、“ウマ娘キャラクター名前予想クイズ”の中で一番のものだと言って間違いありません。

 そして、こんなヒントの置き方をしてくるウマ娘の運営、やべえぞと。信頼出来るぞ……と、最初に思った瞬間でした。

 最後に蛇足となりますが、91年の宝塚記念、杉本清氏が夢と言ったバンブーメモリーは、宝塚記念で最下位だったことをお伝えしておきます。

つまり、またあのクイズをやりたいのです

 ところで、ウマ娘にはこんな称号ミッションがあるのをご存知でしょうか。“ウマ娘を100人獲得しよう”というミッションです。これは育成ウマ娘を獲得するごとに増えていくのですが、筆者はまだ27人です。

 そして、現在実装待ちも含めたウマ娘は何人いるのかというと、公式サイトによれば現在72人いることになっているのです(ハッピーミーク除く)。

 これが何を示しているかというと、少なくともこれからあと28頭は実在の競走馬がウマ娘になるのだろうということです。であるからには、今後新規ウマ娘を発表する際には、ぜひまた“ウマ娘キャラクター名前予想クイズ”をやってほしいなあ! という願望が筆者にはあるわけです!

 ウマ娘から競馬の世界を知った人たちの中にも、好きになったウマ娘のモデルである競走馬を調べていくことで、この馬もおもしろいな、かっこいいなと色々興味を持った方は意外と多いと思います。そんな皆さんにも、あのモデルが分かった時の感覚を味わってもらいたいのです。

 かつて“ウマ娘キャラクター名前予想クイズ”を行った当時は、150RTとか、どんなに多くても500RTくらいしかされていませんでした。ですが、今や『ウマ娘』公式Twitterアカウントのつぶやきはアっという間に数千RT、ツイートによっては1万RTを超えてしまうようになりました。

 この状態で“ウマ娘キャラクター名前予想クイズ”をやったら、どれだけ盛り上がるだろう! とワクワクしませんか? 答えが分かって、その馬を好きだった競馬好きたちが、嬉しそうに思い出を語っていき、それもまたウマ娘好き、競馬好きたちにたくさんRTされていく。そんなTwitterのタイムラインを見たくありませんか?

 というわけで今回は、ウマ娘のデザインのおもしろさを改めて確認する……という名目でしたが、着地点は“ウマ娘キャラクター名前予想クイズ”をまたやりたいという願望のお話となりました。

 アプリのほうももちろん楽しいのですが、元ネタがあるコンテンツだけに“アプリに追加される前に楽しめる企画”があったなら、このコラムのタイトルにある1.8倍なんて1番人気の本命オッズみたいな倍率ではないくらいに『ウマ娘』が楽しめるのではないでしょうか。

 また次回もこういった“楽しみ方”を提示していければと思いますのでお時間ありましたらぜひご一読いただきたければ幸いです!

 それではまた!


【コラム】ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話

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