ロックダウンが金融のデジタル化を加速ーーフィンテックアプリの利用は35〜85%増に【調査報告】 | BRIDGE(ブリッジ)テクノロジー&スタートアップ情報
ピックアップ:Banking On Mobile Up 35-85% Thanks To Coronavirus (After 1 Trillion App Opens In 2019)
ニュースサマリー:2019年は、バンキング及びフィンテックアプリにとって実りの多い年だった。多くのユーザーがモバイルのファイナンスアプリを利用し始め、より多くのアプリが急成長を遂げた。そして2020年は、不幸中の幸いではあるが、新型コロナウイルスに端を発する外出自粛やロックダウンの影響によって、さらなる成長が期待できるかもしれない。
LiftoffとApp Annieの共同リサーチレポートによれば、2019年世界中の消費者がファイナンス・アプリを開いた回数は、2017年から2倍上昇し推計1兆回に到達したという。地域によって1.3倍程度から4倍までと度合いは異なるが、世界全体で一貫してより多くの消費者がファイナンス・アプリを利用し始めていることが分かる。
新型コロナウイルスによる影響に話を移すと、Liftoff社の代表者は、Forbesに対しメールで以下のように回答したという。
話題のポイント:仮に今回のパンデミックがなかったら、世界のフィンテック市場はどのように成長していたでしょうか。過去1年間のデータを遡ると、ファイナンス・アプリの利用は増加していたと予想するのが自然です。
前述の通り、世界のファイナンス・アプリのセッション数(アプリを開いた数)が2019年で1兆回に到達したそうです。各国別の数値を見ると、中国がダントツで多いことが分かります。2位以降はインド、ブラジル、米国と続いています。
ただし、地域別に成長度の違いを紹介すると、特にインドやインドネシアの伸びは凄まじく、どちらも100%を超えています。先進国では、フランスが15%、ドイツと日本が30%成長を記録しています。日本市場ではモバイル決済PayPayの存在が大きく、同アプリのダウンロード数は2019年で世界第3位に位置付けているようです。
以上のデータから、今回のパンデミックがあるなしに関わらず、世界のファイナンス・アプリへの需要は順調に伸びていただろうと予想することができます。
パンデミックは吉とでるか凶とでるか
自己検疫や自粛要請、あるいはロックダウンなどによって、世界中の人々が店や銀行に足を運ばなくなっています。そのような状況下において、決済やバンキングサービスにアクセスできるモバイル金融アプリの利用が増加するは必然的な現象だといえます。
自粛期間中のショッピングや食材の調達にはEコマースサイトが使われるので、モバイル決済アプリの利用は増加が予想されます。収益や収入の低下をカバーしたいという労働者や事業者がローンをする際は、支店に行かずにバンキング系のアプリを利用しているかもしれません。
現在のような状況が続く限り、既存のオフライン型の銀行の窓口サービス利用は遠のき、一方でモバイル金融アプリの利用は増加していくこと推測することができます。
ただし、今回の状況がフィンテック・アプリの成長に好影響を及ぼすと決めつけることはできません。その理由はそもそもの今後の景気の低迷と、消費の低下の影響によるものです。
現在多くの消費者が、同時に労働も自粛しなければならず、収入を断たれている状況です。国によっては政府からの支援もある程度は約束されていますが、この状況下で普段より消費を加速させようと思う人はほぼ存在しないでしょう。
消費が低迷すれば、決済購入の回数それ自体が低下するため、モバイル・アプリだろうが利用頻度は下がるのが当然です。景気が低迷すれば、さらなる支出の低下を生み出し、アプリなどの利用が現象する恐れがあるのです。
今回のパンデミックがフィンテックに大きな利益をもたらし得るのか否かは、時間が証明してくれるでしょうが、ネガティブなシナリオも勘案すると、実際の数値を見ていない時点ではどちらと断定することはできません。しかし少なくとも、既存の伝統的金融からのシフトという観点では、ポジティブに捉えることができそうです。
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