N高とS高が導入したVR面接トレーニングを体験--ドアのノックから始まる臨場感
学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校(N高)ならびにS高等学校(S高)は、VRヘッドセットを活用してバーチャル空間を使った面接トレーニングを2月1日から開始する。その一部を実際に体験した。
VR技術を活⽤して、バーチャル空間内で授業を展開しているN高とS高。新たに導入する面接トレーニングの一部となる模擬面接を体験したN高とS高では、2021年4月からVRヘッドセット「Meta Quest 2」(旧Oculus Quest 2)を活用した新しい学び方を導入している。これまでも生徒への面接トレーニングは、対面やオンライン会議ツールを活用して指導してきたが、新たにバーチャル空間を活用した実践的な面接の練習を取り入れた。なお面接トレーニングには、バーチャルキャストが提供するVRライブ・コミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」を活用している。
これにより、生徒はいつでも自分の好きなタイミングで、より臨場感のあるトレーニングが受けられるようになる。またアバターを活用することで、面接の緊張感をやわらげることができるため、かしこまった場で大人と話すことに慣れていない生徒でも、少しずつステップアップをしながら自信をつけていくことができるのもメリットとしている。
面接トレーニングプログラムでは、学習アプリ「N予備校」のコンテンツとして用意されている「バーチャル面接対策」を視聴して、面接の流れを理解することができるほか、バーチャル空間内に用意された模擬面接会場にある教材を使って、面接の自主トレーニングも可能。それに慣れたら、専門のメンターを相手に台本を使ってのバーチャル模擬面接で流れを体験することができる。ほかにもオンライン会議システムを使って、話す内容はもとより目線や表情もチェックする受け答えの練習も実施している。
今回体験したのは、面接官となるメンター相手に行うバーチャル模擬面接。用意されているバーチャル空間は部屋だけではなく、その入口となるドアも設置されており、ドアをノックして挨拶をして……と、入室から退出まで実践的な練習ができる。
ドアをノックして入室するところから練習ができる面接官に促されて着席し受け答えをするという、現実と変わらない面接の練習を行う。もちろん初期段階では台本が用意されているので、まずは流れを把握するところから始められるようになっている。
台本を使って、実際に受け答えを練習メンターから面接における指導もある面接においてどういうことが大事かの説明志望動機などの質問事項が用意され、それに基づいて練習を行うほかにも自ら面接官となってみることもできる。面接官の視点に立って、学生がどのように見えるかということを体験することも大事なこととしている。ほかにも人数がいる場合は第三者視点から面接の様子を見たり、グループ面接のシミュレーションをしたりできるという。
第三者的な目線で、面接官であったりさまざまな位置から学生側の練習している姿も見ることができる 面接官の立場として評価シートでチェックすることもできる実際に体験してみると、“面接をしてる感”があると言える。ドアのノックからドアの開閉といった入退室、面接官の前に移動して椅子に着席する動作は実際に行う必要があり、身体の動きがあるので身につきやすいというのはある。相手の顔や姿はアバターでデフォルメではあるものの、ビデオ会議システムで対話するよりも臨場感があるというのも一因にあるように思う。
模擬面接は現実にできることではあるが、特定の場所の確保やスケジュールの調整などで手間がかかるのも事実だ。バーチャル空間であれば物理的に離れていても集まりやすくなり、練習のためのハードルは下がって実施しやすくなる。
実際に体験した生徒からのフィードバックとして、バーチャル空間での練習が適しているというシーンについては、「面接の流れを把握したいとき」や「気軽に練習を始めたいとき」という声が高かったという。その一方で「話す内容の練習」は、ビデオ会議システムで表情を見ながら行ったほうがいいという回答が多かったとしている。
バーチャル空間で模擬面接を体験した生徒からのフィードバックほかにもフィードバックにおける特徴として、アバターが相手だとリアルな表情ではないため、精神的な負担が軽減され、不要なストレスや緊張を感じずに練習ができるという声もあったという。
バーチャル空間ならではの練習メリット担当者に話しを聞いたなかでは、現実の練習では得られないような“一体感が得られる”という声もあったと振り返る。うまく言葉で説明できないところもあるが、確かに練習風景を第三者的に見ていたとき、その方がうまくいったときに嬉しく感じたところがあり、練習ではあるものの、みんなで一緒の空間を作り上げている感覚があったのも正直なところだ。
また、部屋の雰囲気を知ることができたという声もあったという。社会人であれば会社ごとに違うとはいえ、会議室の光景は決して目あたらしいものではないが、学生であれば会社の中、そして会議室というのは未知の空間であるからこそ、出てきた声という。バーチャル空間であれば部屋のパターンも作りやすいため、今後の部屋にあわせた練習という発展した活用もできるのではないかと推察する。
もちろん、現実での練習もあることにこしたことはないと思うが、面接の流れを身に付けることに一定の練習も必要と考えれば、練習をやりやすい環境があることはメリットではあるし、そのことを実感できる体験と思えた次第だ。