データ分析はクラウドだけでは厳しい‐IIJがマイクロDCの実用化に向け実証実験
IIJはこのほど、白井データセンターキャンパス(千葉県白井市)の敷地内にマイクロデータセンター(MDC)を屋外設置し、エッジコンピューティング基盤として実用化するための技術検証を行う実証実験を開始した。
エッジコンピューティングとは、IoT(モノのインターネット)機器などのエッジデバイスそのものや、その近くに設置したサーバでデータ処理・分析を行う分散コンピューティングの概念のこと。データをデータソースやエンドユーザーの近くで処理することによって通信の遅延を低減する手法だ。
【関連記事】≪IIJ、仮想環境にVMwareを採用した新IaaS提供 - クラウド移行を推進≫≪IIJ、ゼロトラストネットワーク新サービスを海外向けに提供≫
MDCはその実現方法の1つで、冷蔵庫ほどのサイズに、データセンターに必要な機能を凝縮させ、どこにでも設置できる超小規模のデータセンター設備だ。サーバルームや専門のエンジニアが不要で、運用・保守コストも抑えられる。
例えば、IoT機器や生産現場を自動化するFA(ファクトリーオートメーション)機器などのエッジデバイスと物理的に近い場所にMDCを設置して、超低遅延が求められるデータ処理や、セキュリティ上の制約がある環境でのエッジコンピューティング基盤として利用できる。
また、企業内の拠点に設置することでオンプレミスの小規模マシンルームとしての利用も可能だ。5G(第5世代移動通信システム)基地局の近くにサーバをMDCとともに分散配置し、超低遅延の処理を実現するMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)などのユースケースも想定される。
IIJが今回設置したMDCは、日本で初導入となる豪州Zella DC社製。12Uタイプ(幅68.5cm・奥行110cm・高さ100cm)の屋外設置モデルで、データセンターに必要な機能であるサーバ冷却用空調ユニット、UPS(無停電電源装置)、環境センサ、セキュリティカメラ、物理セキュリティ(遠隔操作可能な電子錠等)を備え、防水・防塵性能と遮音性能により屋内外、場所を選ばず設置できるモデルだ。
同実証実験では、屋外環境に設置したMDCの設備的な性能、自律運転シナリオを検証する。また同データセンター内のデータセンターインフラ管理システム(DCIM)から遠隔で監視・運用の検証も行う。
MDCの検証後、 IoT、ローカル5Gやクラウドサービス「IIJ GIO」といったIIJサービスと連携したネットワークエッジでデータを処理するMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)の実証も行っていく予定だ。
IIJ 基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部の室崎貴司氏は、「クラウドコンピューティングが脳なら、エッジコンピューティングは情報をその場で処理する反射神経のようなもの。現実のデータ分析・活用は、クラウドだけでは厳しく、5G+エッジコンピューティングによって、産業、社会基盤における商用のDXが促進される」と、同実証実験の意義を語った。
IIJでは同実証実験を進め、MDCを活用して自社でエッジコンピューティング環境を短期間で構築、運用できるソリューションを開発し、2021年度中に提供開始する予定だ。