空前のプロテインブーム!~あなたのギモン調べます~

売り場を席けん!プロテイン旋風

最近、コンビニやスーパーでプロテイン入りの飲み物やお菓子などの商品、よく見かけませんか?私が最初に向かったのは、千葉市にある大手スーパーです。入り口の自動ドアが開いてすぐの売り場の正面には、英語で“たんぱく質”を意味する「PROTEIN」の看板。商品に含まれるプロテインの量が書かれたチョコバーやクッキーが山積みにされています。「入り口に置くぐらいだから、今、販売に力を入れてるんだな…」そう思って売り場を歩いてみると「レジの横」「総菜売り場のおにぎりの横」「お酒売り場の横」「駐車場側の別の入り口」にも“プロテイン”の文字が。

プロテイン食品の販売コーナーは、同じスーパーの中に、なんと11か所もありました。

お菓子やスープ、豆腐まで…。

プロテインと聞くと、アスリートやジム通いのマッチョな男性が溶かして飲む「粉末状」のものをイメージする方も多いはず。しかし、店頭に並んでいる商品は実にさまざまです。お菓子やシリアル、そして、ゼリーやスープ、たんぱく質が取れるマーボー豆腐まで。このスーパーのオリジナル商品だけでも40種類以上に上っています。

イオンリテール 村木厚之さん「今はプロテイン食品の売り上げが非常に伸びていまして、お客様のニーズが高く、われわれのオリジナル商品も展開させてもらっています。直近1年間の売り上げは前の年の1.8倍、その前の年と比べると実に4倍に増えています。正直、ここまで伸びると思っていませんでしたが、気軽に商品を手に取っていただけるお客様が本当に多くなっています」

プロテイン市場急拡大2200億円!?

空前の“プロテインブーム”はデータでも裏付けられています。民間の調査会社「富士経済」によると、粉末状のものに、飲料や菓子などの加工食品も含んだ「たんぱく補給食品」の市場規模は、2021年、2200億円を超えたとみられています。この規模は10年前(2011年)の実に4倍。3年後の2025年には、3000億円を超えると予測されています。

ブームの拡大で一風変わった商品も次々に登場しています。こちらは、あの懐かしいお菓子の味がするプロテイン。時計などのブランド品を扱っている貿易会社が新規参入し、去年、発売しました。

ほかにも、プロテイン含有量を強化した「レトルトカレー」や「ポタージュ」「ラーメン」「アイス」など、大手食品メーカーだけではなく異業種からの参入も相次ぎ、これまでの概念を覆すさまざまな商品が開発されています。

どうしてダイエットにプロテイン?

急拡大するプロテイン市場、その理由は何なのでしょうか?最近、プロテインを取り始めたという藤本理沙さん(26)です。人材サービス会社に勤めていますが、コロナ禍で基本的にテレワークの生活になり、運動不足に…。いわゆる“コロナ太り”の解消がきっかけの1つだといいます。

藤本理沙さん「コロナ禍になってすぐに数キロ太って、これはまずいぞ、と思いました。朝のゴミ出し以外、本当に外に出ない。オンラインの会議が続くので、動かずいすに座りっぱなし。休みの日も家で過ごすようになって、体重が自分史上ピークを超してしまったんです」

でも、プロテインを飲むと筋肉がついて逆に太ってしまうと考えている人も多いはず。なぜ、ダイエットに効果的なのでしょうか?

《プロテインとダイエットの関係は?》1、運動したあとにプロテインを取る2、筋肉の量が増えて、消費カロリー(代謝)がアップ3、同じ量を食べても消費カロリーが増えて太りにくい体に?4、プロテインを飲むだけでは効果なし

プロテイン=たんぱく質は、筋肉や臓器、血液などを作る材料となる人間に欠かせない栄養素の1つ。専門家によると、運動したあとにプロテインを取ると、筋肉量がアップし、消費カロリーが増えて太りにくい体になると考えられているんだそうです。

ただ、プロテインを飲むだけではダイエット効果はありません。このため、藤本さんは月に数回、ダンススクールに通い、積極的に体を動かしています。そして、レッスン帰りにはコンビニでプロテイン飲料を買って飲むことが習慣に。その手軽さや飲みやすさも大きな魅力だといいます。

藤本さん「プロテインって、筋トレしている男性が飲むイメージで、シェイカーを振って自分で作るのは面倒くさいし以前は違和感がありました。ただ今はコンビニでも売っていて手軽だし、フルーツ味とかヨーグルト味とかで飲みやすくて、プロテインを飲むというより普通の栄養ドリンクや乳飲料を飲んでいる感じです」

ダイエットへの意識が変わった?

コロナ禍による健康志向の高まりとともに、人気が高まるプロテイン。ただ、ダイエットというと、糖質や炭水化物を控えめにする食事制限が必要だと考える人も多いのではないでしょうか?

Q:食事制限とかは考えなかったのですか?藤本さん「YouTuberも言っていましたが、バナナや豆腐など同じものの『ばっかり食べ』とかの無理なダイエットはリバウンドするってSNSにも書かれていて、そういうのを見て食べないダイエットは良くないという感覚があります。運動してプロテインを飲むとか、コツコツやるような健康維持が良いのかなと」

なるほど。近年の筋トレブーム、そしてコロナ禍の在宅時間が増え、筋トレやストレッチなど健康維持や美容のための動画がよく見られるようになったこともブームの背景にあるんですね。

プロテイン人気はお年寄りにも

プロテインブームは若者だけに広がっているのでしょうか?私が次に訪れたのは、都内の介護付き有料老人ホームです。ここでは、去年12月からプロテインが多く含まれるうどんやそば、ラーメンなどの麺の提供を始めました。

この麺にはたんぱく質が、一般的な麺のおよそ2倍含まれています。食事量が少なく筋力が低下しがちな高齢者。プロテインが多く含まれる食材を使うことで、お年寄りの健康を維持するのがねらいです。この日は、89歳の入所者の男性が、プロテイン入りのラーメンをおいしそうに食べていました。

大野康雄さん「麺は好きだったんですよね。つるっとなめらかですよね。本当に食べやすいです」

ケアスタッフ 伊東花夏さん「たんぱく質を取るにはどうしても魚や肉をたくさん食べなければいけませんが、高齢者の方は食が細くなって、なかなか量が食べられません。飲み込む力が弱くなったり、好きな食材でないと食べられなかったりします。味は変わらずたんぱく質を多く取れるのがこの麺の魅力で、皆さんの健康寿命を延ばすきっかけにもなると思います」

取り過ぎに注意 思わぬリスクも…

若者から高齢者にまで広がるプロテイン。しかし、専門家に聞くと、たんぱく質を取り過ぎると思わぬリスクがあるといいます。

《たんぱく質 取り過ぎに要注意》1、筋肉や体の構造を作る大事な栄養素 不足すると筋肉量や免疫力が低下2、ただ消化吸収できる量が限られ、処理できない分は「尿」や「脂肪」に3、摂取が過剰になると脂肪や尿素に作りかえる「肝臓」や「腎臓」に負担も(神奈川県立保健福祉大学 鈴木志保子 栄養学科長)

たんぱく質は、筋肉などの体の構造を作る大事な栄養素で、適切な量を取らなければ抗体の量が少なくなり、免疫力が低下します。しかし、1度に消化吸収できる量が限られているため、処理できなかったたんぱく質は、尿として排出されたり、脂肪になったりします。過剰に摂取すれば、脂肪や尿素に作りかえる「肝臓」や「腎臓」に負担がかかるおそれもあるといいます。

鈴木志保子 栄養学科長「例えば、仕事が忙しくて昼ご飯を食べられない人が、パンやおにぎりだけ食べて済ませるより、たんぱく質が強化されたヨーグルトも一緒に食べた方が栄養状態が整うというメリットがあります。ただ、過剰にたくさん一気に食べると一部は脂肪になって太ることがあります。過剰摂取が続くと肝機能が低下してくるので、アルコールを飲んでいないのに肝機能の数値が悪くなった人は取り方を見直した方がいいと思います」

適度なたんぱく質の量は?

では、1日にどのくらいの量のたんぱく質を取ればいいのでしょうか?鈴木さんが目安として挙げたのは、体重1キロ当たり1グラム。自分の体重の数字にグラムをつけた量です。

《たんぱく質 1日の摂取量の目安 体重50キロの場合》デスクワークが多い人 …約50グラム1時間以上の運動をした人…約60グラムハードな筋トレをした人…約85グラム高齢者…約55グラム

デスクワークが多い人で体重が50キロなら1日当たり50グラム、1時間以上、運動している人は、その1.2倍ほどが適量とのこと。そして吸収しやすいよう3回に分けて取るのが望ましく、1日3食バランスの良い食事が取れている人は、さらにプロテインを飲んだりする必要はないということです。

こちらは食品に含まれるたんぱく質の量です。例えば、朝食に「ごはん」「納豆」「卵」を食べると、合わせて19.4グラム。体重50キロの人なら、十分な量のたんぱく質を取れている計算になります。

鈴木志保子 栄養学科長「プロテイン食品はとても便利で、利用しやすく十分に栄養を取れていない人には効果があります。でも3食ばっちり食べている方が間食にプロテインをとるのは、本当に必要かなと思います。自分に必要な量や、食事でどれぐらいたんぱく質が取れているかを、まず知ることが重要だと思います」

まずは自分を知ること

コロナ禍の健康意識の高まりとともに、次々に新しい商品が生み出されているプロテイン。しかし、たくさん取れば取るほど健康になるというものではありません。「まずは自分を知ること」今回取材した鈴木志保子さんが話していたことばが印象に残っています。自分に必要な栄養素はどれくらいか、ふだんの食事の栄養バランスはどうか、どのくらい体を動かせているか。便利な商品を上手に使いこなす“知識”を身につけることが大切だと感じました。

空前のプロテインブーム!~あなたのギモン調べます~

タグ: