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経産省が狙う「ロボットフレンドリー」な社会、仕様緩和で惣菜の盛付自動化は可能か
森山和道の「ロボット」基礎講座
経済産業省が「ロボットフレンドリー」という概念を推進している。ロボットと親和性の高い環境の整備を進めたり、要求されている作業レベルを引き下げることで、ロボット導入を推進しようという考え方だ。取り組みも徐々に進んでおり、現場へのロボット技術導入が進められようとしている。ただ、実証実験を超えてうまく進むかどうかについては懸念もある。
サイエンスライター 森山 和道
サイエンスライター 森山 和道
フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。
<目次>- ロボットフレンドリーな環境とは
- 労働集約的な惣菜製造現場でのロボットフレンドリー化
- 仕様の緩和でロボットによる惣菜製造自動化を狙う
- ロボットフレンドリーは儲かるのか
- 「ロボットのため」だけに環境を変えるのはハードルが高い
ロボットフレンドリーな環境とは
日本が競争優位にあるのは自動車やバイク、複合機など部品点数が多く工程が複雑な分野だ。それらの自動化は進んでいるが、まだまだな分野もある。サービス業や、人手に頼っている中小の工場だ。 2019年7月に経済産業省は「ロボットによる社会変革推進計画」に基づいて産学連携で人材育成、技術高度化を目指す方針を示し、実装のためにタスクフォースを作って検討を行い始めた。検討ではサービスロボットの普及が進まない理由として、導入と運用のコストが高い、そして普及が進まないために台数が出ず、結果的に相変わらずロボットが普及しないという負のスパイラルに陥っているとされた。 ロボットが仕事をするには、動きやすい環境を整える必要がある。経産省の「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」ではそれを「ロボットフレンドリーな環境」と呼んでいる。ロボットを導入しやすい環境整備をある程度まとめて進めることができれば、人手不足が進んでいる分野でもロボット導入の全体コストが下がる。主な対象としている分野は、施設管理、小売、食品製造となっている。 特にエレベーターや自動ドアに代表される施設設備との通信や運用、前回触れたような複数メーカー複数ロボットの群管理制御、安全関連など、いわゆる協調領域にある技術は統一規格を策定しておけば、メーカーも開発しやすくなる。そして実際に「ロボット・エレベーター連携インタフェイス定義」はロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会からドラフトが公開されている。また、小売分野においては商品画像データベースを構築しようとしている。徐々にではあるが、ロボットが働きやすい環境への取り組みは進んでいる。労働集約的な惣菜製造現場でのロボットフレンドリー化
「ロボットフレンドリー」の対象分野の1つに食品製造がある。スーパーやコンビニに並ぶお惣菜や弁当の盛り付けには多くの人手が用いられている。ご飯については自動で容器に盛り付ける機械も存在する。だが、特におかずの盛り付けは人手に頼っているのが現実だ。なぜなら、専用機械を使っても速度が遅く、スループットがなかなか上がらないからである。人間は器用で素早い。唐揚げなら数個を一度につかんで入れるくらいの速度が現実的には必要だ。 また、どの具材をどの程度入れるかだけでなく、見栄えも考慮しながら入れていくためには人間ならではの高度な判断能力・作業能力が必要となる。いっぽう、人手不足は深刻化しており、工場における3密回避のために省人化は待ったなしの状況にあるとされている。というわけで、ロボットを使えないかというわけだ。 9月30日にはFAプロダクツらによるロボットフレンドリー勉強会が開催された。デジタルツイン技術を持つFAプロダクツ、設計を行うオフィスエフエイ・コム、メカ系が得意な日本サポートシステムの3社は製造業DXを手がける「Team Cross FA」というコンソーシアムを作っている。彼らは「令和3年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択された日本惣菜協会から協力企業16社の1つとして選定されて、ロボット・AI導入を促進するロボットフレドリーな環境構築を目指している。代表として全体事業取りまとめを行う日本惣菜協会は、600社強の惣菜関連企業の会員を持っている。勉強会では経産省の担当者であるロボット政策室 室長補佐(総括)の福澤秀典氏のほか、キユーピーから日本惣菜協会に移った荻野武氏による講演も行われた。 中食の盛り付けにおけるロボットフレンドリーな環境とは何か。もちろん工場の環境整備、ラインやレイアウトの最適化もあるが、今回、彼らが主なターゲットとしているのは、現状のロボット技術でもやりやすい盛り付け方法や、パッケージのあり方の検討だ。つまり、きれいな飾り付けができないのであれば、透明な嵌合(かんごう)フタはやめてしまって、そういうことを考えなくてもいい方法、整形容器への充填だけで済む方法にすればいいのではないかというわけだ。 具体的には個包装とし、フタのフィルムを熱でシールする、いわゆるトップシールにしてしまう。中身は見えないがトップシールならば吸引で搬送することも容易になる。しばらく前からコンビニのチルド商品などで増えているタイプの商品だ。賞味期限を延ばすことで食品ロスを減らすこともできる可能性がある。 その作業を行うためのロボットも開発する。盛り付けロボットの開発をFAプロダクツとコネクテッドロボティクスが行い、マックスバリュ東海の工場に導入する。具体的にはエフエイ・コムが構想設計、詳細設計を担い、コネクテッドロボティクスが盛り付け制御ソフトを設計する。さらにAIで知られるエクサウィザーズとPreferred Networks(プリファードネットワークス)が盛り付けハンド制御AIを開発する。 また惣菜盛り付けの協働ロボットを開発中のアールティとも協力し、食品工場へのロボット導入のガイドライン策定を目指す。安価なアームロボットとハンドの開発を行い、現状の技術で扱えるようにワークを変えてしまうことで省人化を図ろうというわけだ。 経産省の福澤秀典氏は「ロボットフレンドリーな環境を整えることで人々の生活が豊かになる。ロボットフレンドリーの最終ゴールは、あくまで人の生活を豊かにすることだ」と強調した。ロボット第一ではない、というわけだ。【次ページ】ロボットフレンドリーは儲かるのかお勧め記事
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