バイクでも採用が進むスマートキー、4輪みたいな「リレーアタック」盗難の危険性はある?

そもそも4輪で問題になっている「リレーアタック」とは?

大事な愛車を盗まれないために、防犯登録をしたり、盗難保険に加入したり、様々な防犯グッズを利用することは、今やライダーの常識といえるだろう。

とはいえ、日本全体として車両盗難は減っている。警察庁の資料によると、2020年の自動車盗難件数は2輪・4輪合わせて5210件で、検挙率は57.7%。ちなみに、2002年の盗難件数は6万2673件で、検挙率は20.4%、2010年は2万3970件で検挙率35.2%であるから、車両盗難はかなりのハイペースで減っている。

これは、主に4輪車において簡易的ではあるが盗難防止装置の標準装備化が進んだこと、2輪・4輪問わずイモビライザーの普及が進んだことが抑止効果となったと考えられる。また、ユーザーの防犯に対する意識が高まったこともあるだろう。

鍵をつけっぱなしで放置して盗まれる「キーあり盗難」の発生件数が2002年の2万204件から2020年には1307件へと大きく減っているのは、ユーザー意識の高まりを証明している。

とはいえ、盗難車を海外に輸出するなど窃盗団の動きも巧妙化、ビジネス化している中で新たな手段も生まれている。4輪業界でいまホットな話題が「CANインベーダー」という手口で、車両の制御系をつなぐCAN(コントロール・エリア・ネットワーク)に専用機器を使って侵入、正規の手段で車両を制御しているかのように見せかけてクルマを盗んでしまうというものだ。

これは電子制御時代ならではの手法で、ほかにもスマートキーの信号から複製キーを作ってしまう「コードグラバー」、スマートキーの信号を増幅することでロックを解除してエンジンをかけてしまう「リレーアタック」といった手法も知られている。

4輪では今や軽自動車でもスマートキーは珍しくない装備で、こうした盗難手法に対抗すべく、使わないときにはスマートキーを電波を遮断するケースに入れておくといった対策を取っているドライバーも多い。

バイクでも採用が進むスマートキー、4輪みたいな「リレーアタック」盗難の危険性はある?

バイクにおけるスマートキー採用車種の一例

そして、2輪においても、国産メーカーを中心にスマートキー採用車種が増えている。

2輪用スマートキーをはじめて量産化したのはホンダで、それは2004年のフォルツァだった。現在ではディオ110、スーパーカブC125、PCX、ADV150、フォルツァ、X-ADV、CBR1000RR-Rファイアブレードなど、小排気量スクーターから大型スポーツモデルまで、幅広く採用されている。

ほかにもヤマハがNMAX、XMAX、トリシティ300、TMAX560といったモデルでスマートキーを採用しているほか、BMW、ドゥカティ、ハーレーダビッドソンなど海外メーカーも採用を進めており、2輪のスマートキー化は大きなトレンドとなっているのだ。

バイク用スマートキーは構造が4輪用と違う?

一説には、2輪用スマートキーは4輪と構造が異なるので心配ないという話もあるが、基本的にUHF信号による双方向通信という仕組みは同じであり、リレーアタックの可能性がゼロとは言えない。

たしかに、2輪用スマートキーでは解錠エリアは車体側受信機から1m未満にするなど、ライダーが近くにいるときに他人が解錠してエンジンを始動できないような距離感に設定されている。それでも、コードグラバーやリレーアタックといった盗難手法が完全に無効になるというわけではなく、何らかの対策は必要となっている。

2輪で「リレーアタック」を防ぐための方法とは

とはいえ、2輪メーカーは実質的に有効となる機能を初期の頃から実装していた。

それがスマートキーの電源オン/オフ機能だ。この機能は、ホンダとヤマハいずれのスマートキーに備わっている。

4輪のスマートキーでは、電源オフにできるものはごく一部で、リレーアタック対策として電波を微弱にするモードを搭載したスマートキーが出てきたりしているが、じつは2輪用スマートキーは初期の頃から簡単に電源オフにできる仕様となっていたのだ。

自宅で鍵をしまうときだけでなく、出先であっても愛車から降りたときにはすぐさまスマートキーの電源をオフにする癖をつけておけば、少なくともリレーアタックによる盗難を防ぐことが期待できる。

いちいちスマートキーの電源をオン/オフするというのはひと手間かかる。せっかくスマートキーを使っているのに意味がない……と感じてしまう人もいるかもしれないが、そうした手間を厭わないことが、愛車を守ることにつながるのだ。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ/ヤマハ/BMW/山内潤也 グラフ●警察庁 編集●上野茂岐

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