処理水放出に中韓反発 難航する懸念払拭―東日本大震災11年

 東京電力福島第1原発から出る処理水の海洋放出計画に、中国と韓国が強く反対している。両国は福島などの県産食品に対する輸入規制も継続。根強い反日感情も背景に、東日本大震災から11年を経ても放射能汚染リスクに対する懸念払拭(ふっしょく)が難航している。

処理水放出に中韓反発 難航する懸念払拭―東日本大震災11年

IAEAに全面協力を 日本側に注文―中国

 ◇安全への理解広がらず 韓国政府は処理水を「汚染水」と呼び、放出方針に「最隣国であるわが国との十分な協議や了解のない一方的な措置だ」と反対。日韓会談などで、この問題をたびたび提起している。国際原子力機関(IAEA)などの場でも、日本の放出計画への批判を展開。「国民の安全を守るための最低限の安全装置」(韓国外務省)として、2月に訪日したIAEAの調査団に韓国の専門家を参加させた。 1月に福島県沖で捕れたクロソイから基準値の14倍の放射性セシウムが検出された際、韓国メディアは「放射能汚染が続いているにもかかわらず、日本は海洋放出の準備を進めている」(MBCテレビ)と報道。韓国原子力学会は昨年「韓国の国民への影響は微々たるものだ」との分析を発表したが、国民の理解は得られていない。 ◇日本けん制の材料 中国外務省の趙立堅副報道局長は、日本政府が昨年12月に海洋放出に向けた行動計画を策定した際、「断固とした反対」を表明。「隣国を含む国際社会の懸念にまじめに応え、できるだけ早く海洋放出の決定を撤回して準備作業を停止すべきだ」と訴えた。 日本が米国と同盟関係を強化し日中関係が冷え込んでいることを背景に、中国側には処理水問題を日本けん制の材料とする思惑も透ける。国際社会でも反対派陣営の構築を図り、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が2月4日に北京で会談した際の共同声明は、処理水放出に「深刻な懸念」を表明。王毅国務委員兼外相は昨年10月、太平洋島しょ国の9カ国外相らとオンライン会合を開き、処理水に関し「利害関係国との一致前に放出を始めてはならない」と提起した。 ◇台湾は食品輸入解禁 中韓と比べ親日色の濃い台湾では、蔡英文政権が2月、原発事故後に輸入を禁止していた福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産食品について、11年ぶりに輸入を再開した。日本との長期にわたる懸案をようやく解決させた形だが、安全性を不安視する声は根強く、解禁の是非をめぐるメディアの論調も割れている。 最大野党の国民党は「民進党政府は台湾人の健康を顧みず、『核食』(放射能に汚染された食品)の開放を急いだ」として、被災地食品の輸入に断固反対を続ける考えを表明。党内では再禁輸の是非を問う住民投票の実施を目指す動きもある。消費者の反応は未知数だが、検査不備など何か問題が生じれば、蔡総統の責任が問われ、11月の統一地方選で争点化する可能性さえある。(北京、ソウル、台北時事)。

タグ: