ジム・コリンズに聞く、今後日本から偉大な会社は生まれるか?
GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)を生み出した米国、BATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)を生み出した中国などと比べて、日本企業のイノベーションを生み出す力が低下している懸念がある。日本から今後偉大な会社は生まれるだろうか。
ジム・コリンズ氏(以下、コリンズ):私の研究対象の大部分は米国企業なので、日本通のフリはできない。それでも21世紀の偉大な会社は日本からも生まれてくると考えている。
本当に価値のあるビジョナリーな会社を興したい、構築したいという欲求は米国など一部の国に限ったものではなく普遍的だ。興味深いことに、私が研究してきた最も偉大な企業リーダーの何人かは日本人だ。ビジョナリー・カンパニーをつくりたいという願望は日本でも強く、私の著書が日本で多く読まれているという事実もその表れだろう。そう考えれば、日本から新たに偉大な会社が生まれてこないと考える理由はない。
ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)をはじめとする世界で1000万部超のロングセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者。米コロラド州ボールダーの研究ラボを拠点に四半世紀以上にわたって偉大な企業を研究、経営者から絶大な支持を集める。2017年には米フォーブス誌の「現代の経営学者100人」にも選出された。著書に『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』(Good to Great)、『ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階』(How the Mighty Fall)、『ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる』(Great by Choice、モートン・ハンセンとの共著)(写真:George Lange)これまでの研究を振り返り「ベスト・オブ・ビジョナリー・カンパニー」を挙げるとすればどこか。
コリンズ:それは「我が子の中からお気に入りを選べ」と言われるようなもので、難しい。代わりに産業界で生まれた最もビジョナリーで独創的なアイデアを挙げたい。
時計の針を100年前に巻き戻すと、その頃イノベーションやクリエイティビティーといったものが体系的に再現できるプロセス、あるいは文化だと考えていた人はいなかった。そこへ登場したのが米スリーエム(3M)中興の祖と呼ばれるウィリアム・マックナイトだ。イノベーションやクリエイティビティーを生み出し続ける組織や文化は構築可能であるという斬新な考えの持ち主だった。米国史における合衆国憲法に匹敵するほど、産業史上画期的な発想だ。それが実現可能なアイデアであることを証明したのが3Mだった。ビジョナリーな会社はこれまでもたくさん存在し、今後も登場するだろう。ただ1つ言えるのは、今日のアップルも元をたどればマックナイトと3Mに行き着くということだ。
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