自律移動/清掃/消毒/配膳/警備/遠隔案内など14種類のロボットが集結!「あいちロボットショーケース」レポート(1)
愛知県では、サービスロボットの社会実装を促進するため、様々な施設でロボットが実証実験を行う「あいちロボットショーケース」を開催している。新型コロナウイルス感染症対策を行ったうえでその第一弾が「大名古屋ビルヂング」で行われた(1月18日~24日:既に終了)。
「大名古屋ビルヂング」は名古屋駅から徒歩5分の好立地、上層階にオフィスが多数入居し、下層階は大型の商業施設となっている。イベントスペースや広い通路を活用し、各社が実証実験を実施。14機のロボットのほか、複数のロボットを一括管理できる統合システムも実際に見ることができたので、複数回に渡ってレポートをお届けしたい。
商業施設、病院、ホテル、空港で実証実験の場を提供
今回の「あいちロボットショーケース」は「案内」や「警備」「清掃」「荷物搬送」など、業務の自動化を推進するロボットに加えて、「消毒」「除菌」「テレワーク」など、新型コロナウイルス感染症対策に有効と思われるニューノーマルに対応したロボットが総勢で29機が集結する、と発表された。
会場は商業施設である大名古屋ビルヂング(1/24まで)、藤田医科大学病院(2月~3月)、ホテルアーク(3月中旬まで)、中部国際空港(2月~3月)の4ヶ所。それぞれの施設が実証実験の場として提供され。各分野に適したロボットによるショーケースが展開されることになった(実証実験の見学は報道機関の取材に限定)。
では早速、実証実験をしていたロボット等の一部を紹介していきたい。
前述のように最近では、仕事や作業の自動化がロボットに期待され、コロナ禍での清掃・除菌、非接触対応などにも注目が集まっている。その関係から各社が展示するロボットもニューノーマルを意識したものが多く見られた。
清掃/除菌ロボット
清掃ロボットは自動運転機能を持った自律移動型の床清掃タイプのものが多く、今回も数台が実証実験に参加していた。施設内の一部エリアを時間で区切り、各社の持ち時間で自律走行の実験等が行われた。
アマノ株式会社は他と比較すると大型の清掃ロボット「EG-3RX」(EG-robo)を出展。人の往来がある中、安定した走行と清掃デモを行っていた。
■動画
除菌剤噴霧機能付き清掃ロボットも
日本信号株式会社は、ウイルス除菌機能を持った清掃ロボット「CLINABO CL02」を出展。床清掃ロボット(乾式)の上部に除菌剤噴霧機能を装備したバージョンだ。清掃しながら除菌を行うことができる。
1時間で約1,500平米(テニスコート6面分)の広域作業に対応する。3Dカメラを搭載して自動走行でき、点字ブロックやエクスパンションの乗り越えも対応できる。サイバーダインの技術も活用されている。
噴霧している除菌剤が無色に近いので、動画では確認しにくいが、現地で実際に見ると勢いよく噴霧しているのがわかった。噴霧の作業音は大きい。
■動画
殺菌灯搭載ロボットも実証実験
株式会社ナ・デックスは「テレワークロボット」と「SR-UVC殺菌灯搭載ロボット」の2種を展示。「テレワークロボット」は遠隔操作で運搬や会話を可能にするロボット。現場に行かなくても、自宅や遠隔地から作業に参加することができる。
もうひとつの「SR-UVC殺菌灯搭載ロボット」はコロナ禍でニーズが高くなっている除菌ロボットだ。紫外線UV-C(波長254nm)照射ランプを搭載し、インターネット経由で遠隔操作して殺菌線を照射しながら走行できる。
254nmの紫外線UV-Cは新型コロナウイルスを含め、ウイルスを不活性化する効果が見込まれている。ただ、人体にも有害のため、施設に向けて照射する場合は無人の環境で行う必要がある。そこでロボットの出番となる。遠隔操縦や自律走行でロボットを人がいない施設内に走らせて除菌(ウイルスを不活化)していく。
開発はスマートロボティクスが中心となって行っていて、これまでもさまざまな場所で実証実験が行われてきた。今回も「大名古屋ビルヂング」の会議室で無人環境での実験が行われ、その効果を検証した。
動画内の雑音はロボット稼働によるものではなく、屋外から撮影しているため。
■ 動画
スマートロボティクス 殺菌灯搭載ロボットの実証実験を大型ショッピングモール 「テラスモール湘南」で実施
自律移動できる紫外線UVC空気清浄ロボット
愛知工業大学・ロボット研究会ミュージアムは、AIT・UV-CエアステリライザーRT「ステリボット」を展示していた。
「UVCエアステリライザー」とは、株式会社 AIKIリオテックが開発した空気清浄機。装置内へ室内の空気を取り込み、装置内で殺菌灯の紫外線UV-Cを空気に照射、ウィルスや細菌、カビ等を不活化、または死滅させる。殺菌した空気を再び室内へ送り出すことで、きれいな空間を実現する。紫外線は装置内で照射するので周囲にヒトがいても安全に利用できる。
「UVCエアステリライザー」は据え置き型だが、ロボット研究会ミュージアムが自律移動台車を接続、カメラやディスプレイ等を搭載、動く空気清浄ロボット「ステリボット」として開発した。
自律移動機構を装備することで、ヒトがいる場所を選んで移動し、周囲の空気をクリーンにする機能が実現した。
愛知工業大学 ロボット研究ミュージアム 客員講師の西山禎泰先生は「ステリボットは今まで大学構内での実験は重ねてきたが、商業施設で行うのは初めて。とてもいい機会になった」と語っている。
なお、「UVCエアステリライザー」の実用化は既に進んでいて効果は実証されている。除菌効果の内容・数値を含め、詳細は公式ホームページに掲載されている。(「UVCエアステリライザー」AIKIリオテックのホームページ)
■動画
自律移動警備ロボット
清掃業界と並び、警備業界も高齢化と人手不足が深刻な分野として知られている。そこで警備スタッフの仕事や負担を軽減するため、協働ロボットが普及を目指してリリースされている。今回、警備ロボットを展示していたのは綜合警備保障株式会社とSEQSENSE株式会社。機種は「REBORG-Z」と「SQ-2」だ。どちらも遠隔操縦と自動運転の双方に対応する。
「REBORG-Z」はボディの全面にタッチパネルタイプの大型のディスプレイを持ち、昼間は立哨のほかに、施設の入口などに案内ロボットとして配置することができる。東京の新丸ビルで見た人もいるかもしれない。
■動画 昼間は案内ロボットとして働く (保全エリアのアラート機能のデモ含む)
SEQSENSE(シークセンス)の自律移動警備ロボット「SQ-2」は、LiDARを使った独自の3次元マッピング技術を持つ。ホディの上部でクルクル回るLiDARがユニークだ。この機能を使って自己位置推定、マッピング、自動走行が可能になっている。管理センターが統合管理することができ、通話機能も装備。ロボットを通じて警備スタッフを呼び出し、通話することもできる。
異なるメーカーのロボットの現在位置を一括管理「RoboticBase」
既にロボスタのニュース記事で報じた通り、TIS株式会社はロボット統合管理ソフトウェア「RoboticBase」を展示。サービスロボットをインテグレーションするための統合管理機能を持つ。運搬、清掃、案内、警備など種類やメーカーが異なるサービスロボット、センサー、カメラ、サイネージなどのIoTデバイスを一括で統合管理するプラットフォームとして利用できる。ロボットだけでなく、施設管理や企業システム、外部データとの連携なども可能だ。
会場では、この記事内で紹介した警備ロボット「SQ-2」と清掃ロボット「CLINABO CL02」の現在位置をひとつの画面で表示する実証実験が行われていた。2つのロボットは同じフロアに置かれているが、そのフロアの10ヶ所にビーコンを設置。ロボットの位置をリアルタイムで捕捉して、おおよその現在位置を確認する。
「あいちロボットショーケース」にTISが「RoboticBase」を出展 異なるメーカーのロボットを統合管理 位置を測位し可視化
自律移動ロボットを「配膳」や「サイネージ」に活用
大名古屋ビルジングではこれらロボットやシステムの他、自律移動ロボットを「配膳」や「サイネージ」に活用する実証実験も行われた。更にはコミュニケーションロボットも展示されていた。次回の記事では自律移動ロボットを「配膳」や「サイネージ」に活用する事例を紹介しよう。
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